雑文

「バイオハザード」ゾンビにまつわるエトセトラ

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バイオハザードのゾンビ君についてです。 ・・・と言っときながら・・・
 ちょっとバイオからそれるかもしれませんが、ここでひとつ「ゾンビ君」について、いらんウンチクを書いてみようかと思います。
 知ってる人は「フフン」と鼻で笑ってもらってかまいませんし、知らない人は「そんなこと知らなくったってバイオはたのしいんだい!」 でもいいんですが、知ってソンするハナシじゃぁございやせん。
 しばしのお時間を・・・(ベンベン)


 「バイオハザード ディレクターズカット版」についてくる「バイオハザード2」の体験版のゾンビ君、リアクション増えましたねぇ。結構イイ感じです。

 ファミ通97年10/10号の開発者インタビューにも書いてありましたね、「『ロメロ系ゾンビ』に近付けようとした」と。ではその「ロメロ系ゾンビ」とはなんぞや?
 ロメロの「リビングデッド3部作」を観ていないひともいるかもしれませんのでそこいらへんもあわせておつき合いくださいませ。


 ゾンビの起源は諸説あると思いますが、わたしの知る限りでは、「ゾンビ」とはブードゥー教の儀式のひとつで、さとうきびの運搬などの肉体労働を行うために呪術によって死者を蘇らせていた、という言い伝えからきています。

#もちろん儀式の名称が「ゾンビ」ではございません(儀式の名称は知りません)。

この場合のゾンビ君は「リビングデッド(生ける屍)」といったほうがいいでしょう。

 当然労働力として死者を蘇らせているワケですから、人を襲うことはありません。
 文句は言わないし、食事もいらない、動けなくなったら土に還してあげればいいのでわざわざ奴隷を連れてくる必要もない、というなんともエコロジーなヤツです(^^
土葬の習慣のない日本人にはこういった発想はでてきませんね。

 ですからもともとゾンビ君は人間と共存共栄していたワケです。
 ではなぜしがない農夫だったゾンビ君がこれほど凶暴になり、「ホラー」と名のつくゲームにはたいがい登場し、挙げ句のはてはファンタジーの世界にまで登場してしまう ようになったのでしょうか?

 もう「とりあえずビール!」みたいな感覚で「とりあえずゾンビ!」(^^;
 「『とりあえず』ってゆうなぁぁ!」ってツッコミはおいといて・・・
 一体誰がゾンビ君をこんなにゆーめーにしたの(?_?)

 それは映画監督「ジョージ・A・ロメロ(George A Romero)」です。


 もともとロメロはコマーシャルフィルムなどを専門に撮っていました。その彼が映画を作ることとなり、上に書いたブードゥー教の伝説に目をつけたのです。
 で、製作されたのが「NIGHT OF THE LIVINGDEAD『生ける屍の夜』('68)」。

 このときに「ゾンビは人肉を喰らう」「ゾンビに襲われた人間もゾンビになる」といったおなじみの設定が生まれました。ですが当時はあまりにショッキングな内容(というかカニバリズム(人肉喰い)というタブーを扱った内容)であったため、上映禁止(アメリカじゃよくあるハナシ)にする劇場が続出。いうなれば幻の作品となってしまったのです。ハリウッド的ではない、まったく救われないラストシーンもそれを助長させるものであったでしょう。
 ですが一部熱狂的に支持する人たちも現れ、レイトショーなどで人気が集まり、カルトムービーの元祖、といわれるまでになりました。

 で、時は過ぎ、ロメロは再びリビングデッドシリーズを製作することとなります。それが「DAWN OF THE DEAD『生ける屍の夜明け』('78)」です。

#これ、ファミ通では「ダウン・オブ・ザ・デッド」になってるけど
#大爆笑の大間違い。『ドーン』です。ドーン(DAWN)とダウン(DOWN)じゃ、
#エライ違いだ(^^;;


 「あれ?『ゾンビ』じゃないの?」と思うひともいるかと思いますが、「ゾンビ」とはヨーロッパで公開される際に配給会社(というよりダリオ アルジェントが、といってもいいかな?)つけたイタリア版のタイトル。つまりアルジェント版のほうを「ZOMBIE 〜DAWN OF THE DEAD〜」というわけです。ですからアメリカ版の予告編は「DAWN OF THE DEAD」の連呼。イタリア版の予告編は「ZOMBIE」の文字の繰り返し。本編の構成も大分違います。これは何故か?

 もともと「DAWN OF THE DEAD」はロメロのもとでアメリカ映画として製作されるハズでした。ところが脚本の段階で、このまま撮影をするには予算が足りなくなる ことが判明。急遽スポンサーを探すこととなったのです。
 そこにあらわれたのがイタリアの映画監督ダリオ・アルジェントです。彼はこの作品の脚本をえらく気に入り、ロメロに出資することになります。

 ですが、このときの契約内容がちょっと変わっていて、アメリカにおける興行権はロメロが、ヨーロッパにおける興行権はアルジェントが持つことになったのです。
 つまり、ヨーロッパ版に関しては好きにしていいよ、そのかわりアメリカ版に関してはオレの好きにするから、といった感じの契約だったのです(ここまでハッキリとした契約ではなかったのですが、だいたいこんな感じ)。ですからイタリア版は「ロメロ/アルジェント共同監督作品」的な扱いとなっています。

 ロメロ版ゾンビはどちらかというと、ドキュメンタリータッチの作品に仕上げられていて、「静」の部分が強調されています。対してアルジェント版は自らプロデュースしているバンド「ゴブリン」の曲をふんだんに使い、ストーリーよりもテンポ重視といってもいい、「動」の部分が強調されているといっていいでしょう。

 で、日本公開版はどっち?というと、当時日本では無名に近かったロメロより、「サスペリア」などでネームバリューのあったアルジェントのイタリア版を買い付て 公開されました。邦題も、そのものズバリ『ゾンビ』。「ゾンビ」という言葉がこのときはじめて日本に上陸したのです。
 日本公開版はイタリア版をベースに残酷なシーンにカラーフィルタなどの特殊効果をかけたり、もともとは物語上存在しないゾンビの誕生の説明を付け加えたりされて公開されました。クレジットにも「アルジェント製作」の部分を強調し、この時点でロメロの存在を知るひとはほとんどいなかったのです。

 ちなみに本編中では「ゾンビ」という台詞は1度しかでてきません。ですが、「ゾンビ」という言葉のインパクトや、短いフレーズで多くを語れることから「ゾンビ」は全世界共通語になってしまいました(笑)

 当然日本でもドリフのネタになるほど(笑)大ヒットしたワケです。

 「ゾンビ」は新種のモンスター映画みたいな扱いをされていました。
 まぁ、ビデオが発売されるまでは、ほとんどの日本人はアルジェント版しか知らなかったのですから当然といえば当然でしょう。ビデオが発売されるまでは・・・


 ・・・と言ってるうちに85年に日本でもビデオが発売されました(^^
 劇場でイタリア版「ゾンビ」を観たひとたちは大きなショックを受けるのです。ビデオとして発売されたのはなんとアメリカ版だったのです!

「劇場で観たのと違う!」
「話がやけに重い!」
「ゴブリンの曲が少ない!」
「時間が長い!」

 アクションホラー的なつくりをしていたイタリア版とのあまりのギャップに人々は「どっちがホントの『ゾンビ』なの?」と混乱することとなります。

 結局イタリア版のビデオは発売されず(これについては後述)、アメリカ版が「本当の『ゾンビ』」として普及していくこととなったわけです。私見ですが、これは正しい判断であったといえたでしょう。原案も含めて「リビングデッドシリーズ」は元々ロメロのものなのですから。これは別にアルジェント版がよくなかったとか、そういうことではありません。これは2人の監督による恐怖に対してのアプローチの違い、といってよいでしょう。


 この作品の大ヒットによりゾンビ映画、スプラッタ映画がブームとなるわけです。
 傾向としてはイタリアのねちっこいゾンビ物(ダリオ・アルジェント「デモンズ」、故ルチオ・フルチ「ビヨンド」etc.)、アメリカのたたみかけるようなスプラッタ物(ショーン・S・カニンガム「13日の金曜日」etc.)といったかんじ。

#どっちかっていうと「13金」は「ハロウィン」の影響のほうが強いか(^^;;
#ともあれ80年代はホラー&スプラッタムービーが大量生産されました。

 このブームのなかロメロもリビングデッドシリーズ第3弾を製作します。
 「DAY OF THE DEAD『生ける屍の昼(or日?)』('85)」です。
 日本では「死霊のえじき」というタイトルで公開されました。
 興行的には「ゾンビ」には及びませんでしたが、そこは本家の強み、「最終的にゾンビってどーなっちゃうの?」みたいなものにたいする解答があったり、それなりのものに仕上がってます。バイオにでてくる研究所なんかはここからイメージが来ているのではないでしょうか?「ゾンビ」の続編的なつくりではなく同じ事件の別の側面(リビングデッドシリーズは全てその手法)を描いているのも似ています。

 ちなみに同時期アルジェントもゾンビものを製作します。「デモンズ('85)」です。
 ラストシーン近くで、劇場内での大立ち回りのシーンがあるのですが、そこに突如落ちてくるヘリコプター、あれは「ゾンビ」のラストシーンで飛び立っていったヘリコプターである、ということが明確に示されています。劇場で観ましたけど、なんだかストーリーはよくわかりませんでした(^^;;
 個々のシーンは結構グチャグチャドロドロでしたけど・・・


 時をおいて1994年、「ゾンビ ディレクターズカット完全版」が日本で公開され、それにあわせて「ゾンビ ダリオアルジェント監修版」も公開されることとなったのです。これにより国内ではじめてイタリア版がビデオで発売されることとなりました。

 あえてそれぞれのストーリーの内容などは書きませんでした。話を知らないひとはビデオを借りましょう。いまなら「ゾンビ ディレクターズカット完全版」などは確実にレンタルできるかと思います。トム サビーニが「Say Goodbye」と言ってネタを降りおろすシーンがカッコいいです(^^)/

 ちなみに「一体日本には『ゾンビ』は幾つバージョンがあるの?」といいますと・・・
・アメリカ公開版=日本ビデオ発売版(127分)
・イタリア公開版=ゾンビ ダリオアルジェント監修版(119分)
・ゾンビ ディレクターズカット完全版(139分)
 イレギュラーなものとして・・・
・日本公開版(115分)
・TV初放映版(BGMが「サスペリア」のものに差し替わっている)
・TV放映版(2回目以降BGMを元に戻したもの)

とまあ、様々なバージョンが存在いたします。


 いまさらながらバイオの話に戻りますが、バイオのゾンビ君が支持(?)される理由のひとつに、「ロメロの描くゾンビのステレオタイプ」を見る事ができるからではないで しょうか?これは外見上のものというより雰囲気的なものですが・・・
 人のようで人ではない存在が醸し出す恐怖・・・これをゲームとして上手く表現できたのが「バイオハザード」ではないかと思います。ゲームをする側からみれば、ハンター の方が恐い存在になるのですが(首切りもあるし)、個性はないけど主役を食うほどの存在感はゾンビ君にはかなわないでしょう。ゲロ吐くし・・・(^^;;;

 でもよくかんがえると「バイオ」のゾンビって死者じゃなくてウィルス感染者だったんだっけ・・・(^^;;;


最後に、ロメロはこんなことも言っています。
「何故恐怖映画を撮るのかって? 儲かるからさ。」
名言ですね(^^

ではでは、こんなダラダラとした文章につき合っていただいてありがとうございます m(_ _)m

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