アルツハイマーに効果抜群の妙薬

イチョウ葉のフラボノイドの一部に末梢血管を拡張する作用のあることが確認されると、血流障害
に対する治療効果が期待されました。
こうした研究はやがて、脳の血流障害、すなわち脳梗塞(脳の血管がつまる病気)やボケの症状
へと移り、今度はドイツのJ.ベーガーという内科医によってイチョウ葉エキス(有効成分を濃縮して
取り出したもの)と使った人の試験が初めて行われました。
 J.ベーガーは、重度のボケを発症している31人(14人は、脳の血管が詰まったり、破れたりし
て起こる脳卒中の後遺症によるボケ、残りの17人は原因不明)の患者さんに対して、4週間に
わたってイチョウ葉エキスを与えた結果、なんと81%の人に会話能力の向上や情緒の安定
など著しい回復がみられ、中には介護の必要がなくなってしまった人も現れたというのです。
ところが最近になってアルツハイマー型にしろ脳血管型にしろ、その痴呆の発症には「活性酸素」
が少なからずかかわっていることがわかってきました。

活性酸素とは、エネルギーの代謝(体内エネルギーの出入りや変化)の過程で発生する攻撃性の
強い酸素のことで、呼吸から取り入れる酸素の約2%はこの物質に変化するといわれています。

本来活性酸素は、白血球(血液の成分)の働きを助けて、ウイルス(病原体になる細菌より小さな
微生物)の感染を防いだり、ホルモンを合成したりするときに重要な働きをしています。
しかし、紫外線、環境汚染、喫煙、ストレスなどによって必要以上に発生すると、正常な遺伝子を
攻撃したり、細胞膜のタンパク質や脂質を酸化(酸素と結びつくこと)させたりして、あらゆる臓器や
血管を老化させます。
この活性酸素は、酸素の消費量の多い脳にも発生しやすく特に「記憶の窓」と言われる海馬
(脳の中枢にあり記憶や学習の形成に必要な部分)に発生すると致命的な記憶障害を招きます。
このような障害がやがて、感情や感性を司る前頭葉へと広がり、アルツハイマー型のボケにみら
れる急激な神経細胞の脱落、脳全体の萎縮を引き起こすというわけです。
活性酸素の発生を抑え、神経細胞の死滅を防ぐ成分として注目されているのが、テルペンの
一種である
ギンコライドBという物質です。
活性酸素は、虚血状態(酸素が通わなくなる状態)が回復し、再び血液が流れ出す時に大量
に発生しますが、ギンコライドBには、活性酸を防ぐと同時に、虚血状態そのものを防ぐ働きの
あることが明らかになりました。しかも、ギンコライドBは、記憶力を左右する海馬に優先的に
働き、萎縮を抑えることも動物実験によって証明されたのです。
また、フラボノイドの一種であるフラボンとフラボノールには、一度発生した活性酸素を封じ
込めて除去する働きのあることもわかりました。
さらに、テルペン類の50%を占めるギンコライドは、血中の血小板(血液を固まらせる成分)
の凝集を促進したり、好中球(どちらも白血球の一種)の働きを阻害して、アレルギー反応を
引き起こすPAFという物質の作用を抑制する効果が認められています。
一方、ビロバライドには、中枢神経のけいれんを抑え、神経細胞の働きを保護することが確認
されています。
このような数種類の成分が複合的に働いてアルツハイマー型のボケだけではなく、
脳血管型のボケの予防・改善に役立つものと考えられています。

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