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谷崎潤一郎明治大正期刊行単行本書目     back
こでは、谷崎潤一郎の明治大正期初版本を、自らの所蔵本、そして橘弘一郎編著『谷崎潤一郎先生著書総目録』(全4冊、ギャラリー吾八、昭和39年〜41年刊、各限定234部)を参考に列挙したい。明治大正昭和と3世代を通じて上梓された色とりどりの谷崎本には、その刊行数もさることながら、書誌的情報も未確認なものが幾つかある。全集も15年以上出ていないし、写真入りの詳細な(幾つか抜けはあるが、この30年以上前の書誌が今の所一等纏まっている)『谷崎潤一郎先生著書総目録』も今では古書相場で10万円以上するという現況で、同好の方の利便のために・・・といったら大袈裟すぎようか、まあ趣味的にウェブ上で何かのたしになれば幸甚である。
 
最近、谷崎本は益々値を上げているようだ。無論、代表作や『お艶殺し』『お才と巳之介』のようなものは以前からそれなりに高価であった。鏡花の著作群がぐっと値を上げたのも、また日本近代文学に於ける評価が高まったのも昭和元禄、明治百年の頃であったように思う。文学的評価が古書価をも上げたのである。谷崎は、三島由紀夫の言うごとく「大谷崎」である訳であるが、大正期のものは『痴人の愛』等限られたものしか文学的に評価されてはいなかった、と言っては言い過ぎかも知れぬが、余り重要視されてはこなかったことは事実である。然し乍ら、中央公論社文庫の『谷崎潤一郎ラビリンス』といい、最近の研究傾向といい、次第に谷崎中期の「悪魔主義的」作品が今までになく注目されてきていると言ってよい。無論、完本や美本は以前から高価であったが、最近は人気がより以上に出て来たように感ずる。以下、所蔵本の書影を合わせ乍ら個人的な書誌を先達の資料を参考に、徐々に製作していきたい。尚、ここに掲げられている書影は全て管理人蔵書のオリジナルスキャンである。


『刺青』
籾山書店刊。四六判。角背上製本凾付。明治44年12月10日発行。定価1円。橋口五葉装。叢書名はないが、所謂「胡蝶本」で有名。明治44年1月1日発行の泉鏡花『三味線堀』から大正2年5月25日発行の吉井勇『戀愛小品』まで、この胡蝶本は全24冊ある。因に、『刺青』は荷風の『紅茶の後』に出された6冊目の本。この胡蝶本初版凾付の全24冊揃が、神田古本まつりに出品。価格は300万円であった。

 初版本と凾。


『あつもの』春陽堂刊。菊判。丸背上製本クロス装。凾付。大正2年1月1日発行。定価1円。扉の木版画は橋口五葉。背以外は皆『羹』という表記である。

橋口五葉の木版画による扉。


『惡魔』籾山書店刊。四六判。角背上製本和紙継表紙凾付。大正2年1月20日発行。定価1円。橋口五葉装。これも所謂「胡蝶本」の一つである。胡蝶本には、橙、焦茶、の表紙色があるが、『刺青』は橙、この『惡魔』は焦茶である。これは久保田万太郎の『雪』(大正2年1月20日発行)の次に出された、胡蝶本としては17冊目のものである。凾付で、まあ8万円くらいか。
『戀を知る頃』植竹書院刊(現代傑作叢書第五篇)。菊半裁判。角背上製本。大正2年10月5日発行。定価50銭。橋口五葉装。口絵写真に著者肖像。カバー付きは極稀。
『甍』鳳鳴社刊。四六判。角背上製本布装凾付。大正3年3月21日発行。定価85銭(改正定価1円20銭)。橋口五葉装。因に、「甍」という小説は谷崎にはない。書名だけである。

初版本表紙。


『戀を知る頃』植竹書院刊(文明叢書第十篇)。菊半裁変型判。並装小口アンカット。大正3年9月25日発行。定価10銭。潤一郎の著書のなかで一番定価が安いもの。
『麒麟』植竹書院刊(現代代表作叢書第三篇)。菊半裁判。角背上製本絹装。凾付。大正3年12月5日発行。定価1円20銭。収録挿画は次の通り。「麒麟」横山大観画、「誕生」安田靭彦画、「信西」長野草風画、「捨てられる迄」「戀を知る頃」平福百穗画。凾・表紙は結城素明画。
『秘密』鈴木三重吉刊(現代名作集第十四篇)。菊半裁判。並装。大正4年5月3日発行。定価15銭。表紙は津田青楓画。序文鈴木三重吉。これは、作家鈴木三重吉個人が企画・出版した叢書の1冊である(発売は東京堂)。この間の古書展で25000円で出品されていたが、貧乏書生には手もでない。
『お艶殺し』千章館刊。四六判変形。角背上製本凾付。大正4年6月5日発行。定価95銭。凾、表紙、見返し、扉、挿画は山村耕花による木版画。「お艶殺し」1篇のみの単行本であるのに至る所木版画で埋められた贅沢な本。凾にも扉にも潤一郎の名前と同等に山村耕花の名が記されている。潤一郎の全著作のうちで最も高価な古書価のものであろう。「希少文学書・古書価十年の動き」(『日本古書通信』第60巻第16号)では60万円の値が付けられている。

 

表紙と凾


『お才と巳之介』新潮社刊(情話新集第六篇)。菊半裁判。角背上製本。大正4年10月20日発行。定価35銭。竹久夢二装。「情話新集」全12冊は竹久夢二による多色刷木版画表紙で、潤一郎のものばかりでなく、近松秋江、長田幹彦他、このシリーズのものは皆人気が有り、古書価も高い。

夢二の木版表紙。


『小説二篇』やなぎ書房刊。四六判。角背上製本凾付。大正4年11月27日発行。定価65銭。

初版表紙。


『小説二篇』三生社書店刊。四六判。角背上製本凾付。大正4年11月27日発行。定価65銭。上記『小説二篇』と体裁はすべて同一。
『お艶殺し』新潮社刊(代表的名作選集第十八篇)。菊半裁判。角背上製本絹布クロス継表紙天海老茶色染。大正5年2月13日発行。定価35銭。この「代表的名作選集」の編者は島村抱月・生田長江・相馬御風・中澤臨川。これの重版本なら、今でも500円程度でよく見かける。


『金色の死』日東堂刊(名家近作叢書第二輯)。菊半裁判。角背上製本クロス装。大正5年6月10日発行。定価50銭。一昨年、8万円という値段で某古書展に出品されていた。買えないが、まずめったにおがめない代物なので、是非ガラスケースを通してでも拝みたいと思っていたが、なかった。ということは売れたのか?! この本は、住吉川ぞいの倚松庵二階のガラスケースに飾られている。
『神童』須原啓興社刊(近代傑作叢書第一篇)。菊半裁判。丸背上製本布装天金。凾付。大正5年6月16日発行。定価50銭。山村耕花装。口絵写真著者肖像。

第3版凾と表紙。


『鬼の面』須原啓興社刊。四六判。丸背上製本クロス装。凾付。大正5年9月10日発行。定価85銭。名取春仙装釘・挿画
『刺青 外九篇』春陽堂刊。菊半裁判。角背上製本布装凾付。大正5年9月15日発行。定価95銭。山村耕花装。本書初版は背、扉に「刺青 外十篇」と誤記。再版以降訂正される。

表紙。


『戀を知る頃』(第五版)三陽堂書店刊。菊半裁判。角背上製本背クロス装。凾付。大正5年12月15日発行。定価50銭。大正2年植竹書院版の第五版本。同一紙型なれど、出版社、装釘等が変わっている。これは『総目録』にも記載なし!

表紙と背。


『鬼の面』(第六版)須原啓興社刊。四六判。丸背上製本クロス装。凾付。大正6年3月1日発行。定価60銭。上記『鬼の面』の重版本。同一紙型なるも定価や凾の装釘が異なる。
『戀を知る頃』(第六版)東光堂出版部刊。菊半裁判。角背上製本背クロス装。凾付。大正6年3月15日発行。定価50銭。大正5年三陽堂版の第六版本。同一紙型なれど、出版社が変わっている。
『人魚の嘆き』春陽堂刊。菊半裁判。角背上製本。大正6年4月20日発行。定価95銭。表紙画、扉画、挿画は、『谷崎潤一郎先生著書総目録』では本間國雄となっているが、没後版『谷崎潤一郎全集月報4』では名越國三郎画となっている。書物のどこにも装釘・挿画者の名前は記入されておらず、一概には判断出来ない。この問題については拙稿「挿画本『人魚の嘆き 魔術師』の位置」(『藝文攷』第4号所収)を御覧頂きたい。また、この書は、収録短篇「魔術師」及「鶯姫」の挿画により、潤一郎本唯一の発売禁止(風俗壊乱)処分を受けた。が、該当挿画2葉を削除してそのまま発売されたようである。よって再版以降は挿画は2葉しかない。無論初版でも削除本はある。重版本に幾つか異装あり。初版は暗青色、平・背中ともにタイトル字は潤一郎のペン字を金箔押し、暗緑色箔押し同じ、白色で背中タイトル明朝体、藤色で箔押し潤一郎ペン字で印刷所が変わって本文新組されたもの、と幾つかありまだまだ不明な点があるが、なかなか市場に出ないので何とも・・・。重版になってから凾が付いたらしい? 

書影は、下記の第6版と色違いです。

99.8.21追記:御覧になった方から、谷崎が本間国雄に装幀を依頼した未発表書簡の存在をご指摘いただきました。が、少なくとも挿画に就いてはその後若干わかった資料もあるので、近い内に画像比較をも含んだ小論をご報告出来ると思います。→完成しました「『人魚の嘆き』挿画考」)。

04.9.24追記:初版は暗緑色の表紙で重版よりも少しサイズが大きいです。第6版までは目次のインクが赤色。初版にはタイトルが明朝のもあり、日本近代文学館で実見してきました。更に驚きの追加情報、再版に、挿画を削除していないものあり。


『異端者の悲み』阿蘭陀書房刊。四六判。丸背上製本天金。凾付。大正6年9月15日発行。定価1円20銭。御存知のように、阿蘭陀書房は北原白秋が弟と一緒にやっていた出版社で、他に芥川の『羅生門』等を上梓している。凾欠なら1万円、凾付だったら、8〜9万円。
『鬼の面』(第七版)若月書店刊。四六判。丸背上製本クロス装。凾付。大正7年1月15日発行。定価1円10銭。体裁は第六版と同一。出版社、定価が変わっている。

第七版表紙。


『麒麟』(第三版)三陽堂出版部刊。菊半裁判。角背上製本クロス装。凾付。大正7年5月11日発行。定価1円50銭。本書は大正3年の植竹書院版の重版本。装釘・定価・出版社が変わった。「挿画は横山大観のもの1葉のみに変わっている」と『谷崎潤一郎先生著書総目録』ではなっているが、確かに卷頭のアート紙刷り挿画は1葉だが本文中に「捨てられる迄」と「恋を知る頃」の挿画は入っている。尚、大正4年2月10日発行の第四版からは、表紙の青色クロスが朱色絹に変わる。8000円くらいか。

 第参版凾と表紙。


『あつもの』春陽堂刊。菊半裁判。角背上製クロス装。凾付。大正7年8月13日発行。定価85銭。大正2年版『あつもの』では「前篇終」となっているが、第十二章、第十三章が追加され、「完」を迎えている。よって、この単行本を以て『あつもの』完成稿初収録本となる。
『二人の稚児』春陽堂刊。四六判。丸背上製本。背コーネルクロス装。凾付。大正7年8月21日発行。定価1円35銭。平は一見マーブル紙に見えるが、印刷物である。『金と銀』等も同様。初版に、目次から「兄弟」が抜けているものがある。

初版本凾と表紙。


『金と銀』春陽堂刊。四六判。丸背上製本。背コーネルクロス紙装。凾付。大正7年10月8日発行。定価1円35銭。初版凾付は、神田某書店で48000円の値を付けていた。

  

(左)初版本。(右)昭和2年3月15日発行の改訂十版。凾、装幀、印刷所、定価、目次デザインが若干変わる。


『ウインダミーヤ夫人の扇』天佑社刊。四六判。角背上製本。凾付。大正8年3月23日発行。定価1円40銭。本書は谷崎唯一の翻訳単行本(無論この書の文庫版も春陽堂世界名作文庫ででているが、単行本では初である)。凾の表記はすべて「ウインタミーヤ夫人の扇」だが、本体はちゃんと「ウインダミーヤ夫人の扇」。何故?

凾。


『小さな王國』天佑社刊。四六判。丸背上製本。背コーネルクロス装。凾付。大正8年6月10日発行。定価1円60銭。口絵写真あり。
『呪はれた戲曲』春陽堂刊。四六判。丸背上製本。背コーネルクロス装。凾付。大正8年7月28日発行。定価1円55銭。
『人魚の嘆き 魔術師』春陽堂刊。四六倍判。角背上製本。背布装。大正8年8月18日発行。定価1円50銭。本文アート紙。巻頭多色刷り口絵2葉。本文挿入単色挿画多数。画・水島爾保布。4号活字1段組。詳細に就いては拙論「挿画本『人魚の嘆き 魔術師』の位置」を参照。

初版本表紙。


『人魚の嘆き』(第六版)春陽堂刊。菊半裁判。角背上製本。凾付。大正8年9月5日発行。定価が1円10銭。表紙画、扉画、挿画は、『谷崎潤一郎先生著書総目録』では本間國雄となっているが、没後版『谷崎潤一郎全集月報4』では名越國三郎画となっている。書物のどこにも装釘・挿画者の名前は記入されておらず、一概には判断出来ない。上記初版を参照。これは初版に比べて定価と表紙の色、そして印刷所が秀英舎印刷所から川安印刷所に変わっている。それと『総目録』によると、本文も新組みされている、という。

六版の凾と表紙。こちらは十二版の表紙。

上記の六版と十二版を比較してわかる差異は、判型は同一であるが、厚さが十二版の方が若干ある。そして表紙の色。また表紙のタイトル金箔押しが、十二版の方が文字間隔がつづまっていること。中身の差異では、奥付のデザインが異なる、定価が一円五十銭になっていることなどがある。この本の初版と重版の間にはそれぞれ多種の異装があるといわれているが、ほかにも背中のタイトルが明朝体活字のもの、クロース装のものなどがあるという。情報をお持ちの方、投稿していただけると有り難いです。


『近代情痴集/附り異國綺談新潮社刊。四六判。丸背上製本。背クロース装、三方小口マーブル染。大正8年9月8日発行。定価1円60銭。序文永井荷風。巻頭口絵著者肖像写真。表紙は小村雪岱による多色刷り石版画。挿画も雪岱による。本書は、背には単に『近代情痴集』とあるも、同名異本との混同を避けるために扉にあるタイトルを掲げた。

初版本表紙。


『自畫像』春陽堂刊。四六判。丸背上製本クロス装。凾付。大正8年12月28日発行。定価2円。谷崎に「自畫像」という作品はない。装幀は、橘氏も述べているように水島爾保布だと思われるが、発売当時の春陽堂の広告では、「著者自装」となっている。

凾。このモスキートマンみたいのは一体何なんでしょう。箸をくわえた人?くちばし?


『女人神聖』春陽堂刊。四六判。丸背上製本紙装。凾付。大正9年1月25日発行。定価1円70銭。本書は、「新小説」(大正9.2)に出ている春陽堂の広告によると小村雪岱装。木版の橙色が眩しい華麗な書物。

凾と表紙。


『恐怖時代』天佑社刊。四六判。丸背上製本クロス装。凾付。大正9年2月18日発行。定価1円80銭。無論、ここに収められている「恐怖時代」は「改作」版である(初出誌はこの作品により発禁)。初版の凾に二種類あり、茶凾と緑凾。
『戀を知る頃』(第八版)三星社出版部刊。菊半裁判。角背上製本。大正9年4月15日発行。定価70銭。表紙石版多色刷り。本書は、大正2年の植竹書院版、大正6年の東光堂出版部版と同一内容同一紙型使用、奥付けではその八版とされているが、装幀、発行所、定価、扉頁が変わっている。
『天鵞絨の夢』天佑社刊。菊半裁判。丸背上製本クロス装。大正9年6月12日発行。定価1円60銭。
『潤一郎傑作全集』(第一巻)春陽堂刊。菊半裁判。丸背上製本絹布装。天金。凾付。大正10年1月18日発行。定価2円70銭。小村雪岱装。谷崎初の全集。
『戀を知る頃』(第十二版)三星社出版部刊。菊半裁判。角背上製本。凾付。大正10年5月25日発行。定価70銭。先に掲げた第八版と同一紙型であるが、表紙と扉頁デザインが変わった。
『異端者の悲み』千山閣書店発行。四六判。並装。大正10年7月8日発行。定価1円50銭。
『法成寺物語』新潮社刊(現代脚本叢書第三編)。四六変型判。並装。大正10年7月17日発行。定価1円。表紙画田中良。田中は後に「肉塊」や「大阪朝日新聞」掲載分の「痴人の愛」挿絵を担当。


『AとBの話』新潮社刊。四六判。丸背上製本布装。凾付。大正10年10月15日発行。定価2円。水島爾保布装。

凾。表紙。


『恐怖時代』金星堂刊(金星堂名作叢書11)。四六半裁判。角背上製本。大正11年4月25日発行。定価50銭。
『麒麟 他二篇』春陽堂刊(ヴェストポケット傑作叢書第十三篇)。四六半裁判。並装。大正11年5月13日発行。定価50銭。


『金色の死 他三篇』春陽堂刊(ヴェストポケット傑作叢書第十四篇)。四六半裁判。並装。大正11年5月13日発行。定価50銭。今、このヴェストポケット傑作叢書は物凄い値段がついている。
『愛すればこそ』改造社刊。四六判。丸背上製本布装。天金。凾付。大正11年6月3日発行。定価1円60銭。この本の重版本ならば(100版を超えているからか)よく見かける。


『神童』金星堂刊(金星堂名作叢書12)。四六半裁判。角背上製本。大正11年6月15日発行。定価50銭。

初版本。


『お國と五平 他二篇』春陽堂刊(ヴェストポケット傑作叢書第十八篇)。四六半裁判。並装。大正11年7月18日発行。定価50銭。
『愛なき人々』改造社刊。四六判。丸背上製本布装。天金。凾付。大正12年2月3日発行。定価2円。伏字多数。


『アl・マリア』新潮社刊(中篇小説叢書12)。四六判。並装。小口アンカット。大正12年3月15日発行。定価70銭。


『潤一郎戯曲傑作集』金星装刊。四六判。丸背上製本。背コーネル革装。凾付。大正112年7月25日発行。定価3円。

凾と表紙。


『肉塊』春陽堂刊。四六判。丸背上製本クロス装。凾付。大正13年1月8日発行。定価1円90銭。扉画及挿画は田中良。
『無明と愛染』プラトン社刊。四六判。丸背上製本。総革装。天濃緑色染。凾付。大正13年5月20日発行。定価2円20銭。奥付けの印刷者は「プラトン社印刷部直木三十三」となっている。背中の皮部分の状態が悪いもの、凾の題簽が擦れているものが多い。3000円くらいか。


『近代情痴集』新潮社刊。四六判。並装。小口アンカット。大正13年7月5日発行。定価1円20銭。先に掲げた大正8年版のものより「附り異國綺談」の三篇が抜けている、普及版といったところのもの。

初版本。


『刺青 外九篇』(第二十五版)春陽堂刊。四六判。丸背上製本クロス装。凾付。大正13年7月15日発行。定価2円。大正5年版と同一作品収録なれど、本文新組、異装幀。
『小さな王國』(復興版)新榮閣刊。四六判。丸背上製本。凾付。大正13年9月10日発行。定価1円60銭。本書は大正8年の天佑社版と同一紙型を使用しているが、口絵2葉はない。

初版凾


『潤一郎傑作全集』(第十版)春陽堂刊。菊半裁判。丸背上製本クロス装。凾付。大正13年10月15日発行。定価2円50銭。本書は大正10年版の二十五版本であるが、新紙型、異装幀である。
『藝術一家言』金星堂刊。四六判細長型。角背上製本布装。小口アンカット。凾付。大正13年10月20日発行。定価1円80銭。凾に異装、そして本体が並装のものもあり。

これは並装のもの。


『新選谷崎潤一郎集』改造社刊。四六判。丸背上製本クロス装。凾付。大正13年12月15日発行。定価5円50銭。
『神と人との間』新潮社刊。丸背上製本クロス装。凾付。大正14年1月1日発行。定価2円。本文コットン紙。凾には、「長篇小説」とある。

初版凾


『肉塊』(第七版)春陽堂刊。四六判。丸背上製本背布装。凾付。大正14年2月5日発行。定価1円90銭。本書は、大正13年版と同じ紙型使用せるも、凾、装幀は変わっている。本文中に挿画多数。
『恐怖時代』(第十三版)金星堂刊。菊半裁判。角背上製本。カバー付。大正14年4月10日発行。定価60銭。本書は大正11年の金星堂名作叢書本の重版であるが、装幀はがらりと変わり、同じ叢書の『神童』と同じ装幀である。
『痴人の愛』改造社刊。四六判。丸背上製本。凾付。大正14年7月20日発行。定価2円。初版でなければ三千円程度。

凾と表紙。


以下、工事中。