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三島由紀夫原作・出演映画一覧


こに、三島由紀夫原作・出演映画一覧を公開する。既に詳細なフィルモグラフィーはあるが、ウェブ上での閲覧という利便性を考慮して、それら先行文献を参照しつつ作成した。ここには、一応三島原作とクレジットで記されているものに限った(「愛の処刑」も含めた)。

参考文献:磯田勉・森直人「三島由紀夫関連作品フィルモグラフィー」(『ユリイカ』00.11所収)、平山城児「作品の映画化」(松本徹他編『三島由紀夫事典』所収)、安藤武『三島由紀夫「日録」』(未知谷)。引用などの場合は、ここに掲げた詳細な参考文献をきちんとあたって下さい。

◎凡例 三島原作の映像化のみで、ドキュメンタリー、文学紀行、特集番組、ニュース等は省略した。タイトル/監督名/公開年/制作・配給/カラー/出演者/原作/ソフト化(廃盤・海外版含む)/備考、の順番で記した。



純白の夜

大庭秀雄監督、昭26、松竹。モノクロ。出演:木暮実千代 、河津清三郎 他。原作:「純白の夜」。備考・三島出演。☆稿者未見。当時の松竹の宣材に三島コメント掲載。


夏子の冒険

中村登監督、昭28、松竹。カラー。出演:角梨枝子 、若原雅夫 他。原作:「夏子の冒険」。☆「カルメン故郷に帰る」に次ぎ、日本で2番目のカラー映画としても知られている。パンフレットあり。


にっぽん製

島耕二監督、昭28、大映。モノクロ。出演:山本富士子、上原謙他。原作:「にっぽん製」。☆当時の新聞で、この映画についての三島参加座談会がある。☆☆越路吹雪主演でテレビドラマにもなった。


潮騒

谷口千吉監督、昭29、東宝。モノクロ。出演:青山京子、久保明他。原作:「潮騒」。

当時のパンフレット


永すぎた春

田中重雄監督、昭32、大映。カラー。出演:若尾文子、川口浩他。原作:「永すぎた春」。☆4月にDVD発売。


美徳のよろめき

中平康監督、昭32、日活。モノクロ。出演:月丘夢路、葉山良二 他。原作:「美徳のよろめき」。☆一昨年BSで放映されたが、惜しいかな、録画失敗した。この映画自体については、三島は新婚旅行の途次観てけなしている。☆☆第14回東京国際映画祭で一回だけ上映され(01.10.30)見てきましたが、やっぱり三島の云うとおり駄作、原作ぶち壊しで変にユーモラスにしてあり、ショーもない映画でした。台本は雑誌『シナリオ』に掲載。


炎上

市川崑監督、昭33、大映。モノクロ。出演:市川雷蔵、仲代達矢他。原作:「金閣寺」。ソフトあり。


燈台

鈴木英夫監督、昭34、東宝。モノクロ。出演:津島恵子、久保明他。原作:「燈台」。☆60分くらい。いわゆるSP映画。


不道徳教育講座

西河克己監督、昭34、日活。モノクロ。出演:月丘夢路、大坂志郎他。原作:「不道徳教育講座」。備考・三島出演。☆映画台本にしては豪華で、タイトルは題簽、なかにも凝った紙が使われている。不道徳教育講座は、このほかにも松竹新喜劇やOSミュージック公演として舞台化されてもいる。

映画台本。


からっ風野郎

増村保造監督、昭35、大映。カラー。出演:三島由紀夫、若尾文子他。ソフトあり。備考・三島出演、主題歌作詞、唄。☆これのレコード(キングレコード、昭35.3)は、古レコード業界では幻といわれているらしい。今はCD(「若さでムンムン」Pヴァイン発売)で聞ける。ただ、主題歌三島といっても、映画本編では劇中2シーンのみにちらっと遠くに聞こえるだけである。しかもさびの「からっ風野郎」という歌詞が故意に消されて・・・何故大々的に使われなかったのだろう? 余りに下手だからか?☆☆勿論、これのパンフ(「大映グラフ」)も存在します。また、記念のライターというのもある。これのEPレコード、こないだ初めて手にとって見てきました。春日八郎とカップリングされています。☆☆☆DVDには、予告編もついている。☆☆☆もともと撮影所を見学に来た川端康成を囲んで三島・増村・川端・若尾ほかがしゃべっているのを撮影し、それを予告編に使おうとしたが、三島からのクレームでオクラになった。そもそもこの映画は白坂依志夫オリジナル脚本「肉体の旗」という、日本版「カルメン」で、三島は自衛隊隊員のドン・ホセ役だったのだが、結局それはNGになった。主人公の衣裳はほぼ三島の自前衣裳である。この映画は、もともと「鏡子の家」の映画化プランがぽしゃり、三島主演の話になったらしい。制作記者発表からクランクアップまで、当時の週刊誌、スポーツ新聞など丹念に見ていくといろいろ面白い記事がある。次に、当時の新聞・雑誌の記事から「からっ風野郎」関連事項を時系列で並べてみよう。

昭和34年11月14日昼 三島由紀夫映画出演記者会見(三島・永田社長) 帝国ホテル新館地下クラブルーム

昭和35年1月末 当初予定の白坂依志夫「肉体の旗」から菊島隆三「からっ風野郎」に脚本変更

同2月1日午後3時 スタッフ打ち合わせ 大映多摩川スタジオ

同2月4日午後1時 スチール撮影 大映多摩川スタジオオープンセット

同2月8日午前8時 クランクイン 多摩川京王遊園地ロケ(午後はスタジオでリハ)

同日午後 主題歌「からっ風野郎」曲完成

同2月16日午後10時〜 主題歌レコード吹き込み 音羽キングレコードスタジオ

同2月18日(?)午後3時 川端康成現場訪問 座談方式で予告篇用に撮影

同2月25日午前 岸田今日子現場訪問 大映多摩川スタジオ

同2月26日 水谷良重ベッドシーン撮影 大映多摩川スタジオ

同2月29日午後10時〜 西銀座三愛デパート洋品売場ロケ

同30日午前12時30分頃 三島頭部負傷 若尾文子の車で午前12時45分虎ノ門共済病院に到着・入院(4階416号室)

同3月2日 頭部4センチ裂傷、10日間安静言い渡し(主任医師竹内一夫博士)

同日午後 増村保造ら病床見舞い

同3月8日 大映女優宮川和子病床見舞い

同3月10日 虎ノ門病院を退院

同3月11日午前9時〜 アフレコ参加 大映スタジオ

同日午後1時〜 撮影所内床屋にて整髪

同12日朝 主人公朝比奈が小泉芳江(若尾)と知り合うシーン撮影 菊島隆三現場訪問 大映スタジオ

同13日 オープンセット撮影

同14日午後9時〜 西銀座三愛デパート洋品売場「ラストシーン」ロケ・5カット 永田社長・竹田撮影所長・松山常務・野田宣伝部長・菊島隆三ら立ち会い

同15日午前12時過ぎ クランクアップ

同23日 大映系封切り(併映は田中重雄監督、山本富士子主演「東京の女性」)

☆余談だが、映画出演時のブロマイドは、若尾文子のと共に現在でも東京浅草のマルベル堂で売っている。


お嬢さん

弓削太郎監督、昭36、大映。カラー。出演:若尾文子、川口浩他。原作:「お嬢さん」。備考・主題歌作詞三島由紀夫。こないだ実際に映画を観てきて、主題歌三島作詞ということを確認してきました。☆☆その後の調査によって、主題歌は三島由紀夫作詞・中原美沙緒唄で、キングレコードから発売されていたことがわかりました。☆☆☆この映画は、「からっ風野郎」撮影中、当時「お嬢さん」を連載していた三島が若尾にそのプランを話し、若尾が映画化権を貰ったというもので、この映画の中で若尾文子が着用する20着以上の和洋服は、全て若尾文子デザインによるもの。


黒蜥蜴

井上梅次監督、昭37、大映。カラー。出演:京マチ子、大木実他。原作:「黒蜥蜴」。ソフトあり。備考・主題歌作詞三島。☆一種のミュージカル映画である。主題歌三島作詞とクレジットには出ているが、実際に当時の台本をみてみると、当初のものと実際に使われた歌詞は大分違うことがわかる。☆☆私的な感想では、どちらかというと丸山版はより乱歩の原作的、こちらはより三島の戯曲寄りという感じ。「黒蜥蜴」初演(水谷八重子主演)と同時期に公開し、当時マスコミをにぎわせていた。


三隅研次監督、昭39、大映。モノクロ。出演:市川雷蔵、長谷川明男他。原作:「剣」。ソフトあり。☆これは当時テレビドラマにもなっている。


潮騒

森永健次郎監督、昭39、日活。カラー。出演:吉永小百合、浜田光夫他。原作:「潮騒」。ソフトあり。


獣の戯れ

富本壮吉監督、昭39、大映。モノクロ。出演:若尾文子、伊藤孝雄他。原作:「獣の戯れ」。☆さすが昭和39年、幸二がスパナを拾う場所が代々木のオリンピック会場前のベンチ! であった。☆☆パンフあり。4月にDVD発売


肉体の学校

木下亮監督、昭40、東宝。モノクロ。出演:岸田今日子、山崎努他。原作:「肉体の学校」。☆これも観ましたが、当時としてはなかなかモダンだったのだろうと感じられるようなつくりの映画でした。シナリオは『映画芸術』にあります。


憂國

三島由紀夫監督、昭41、ATG。モノクロ。出演:三島由紀夫、鶴岡淑子。原作:「憂国」。備考・三島由紀夫原作脚色監督主演制作。上映時は、ブニュエルの「小間使いの日記」と併映された。☆パンフは、下記のものだが、左上の「小間使いの日記」の上にちゃんと「憂国」と入っているものもある(中身などほかは同一)。どうも一昨年のカンヌ映画祭で上映されたらしいが、詳細不明。情報求む! ☆☆昨年フランスのフェティッシュ・フィルム・フェスでも上映されました!☆☆まず東京のアートシアター新宿文化と日劇文化で封切り、その後大阪の北野シネマほかで公開。☆☆☆4月に東宝よりDVD発売。フランスでの試写会時に配付された、三島直筆入りの仏語案内状が復刻版でついてきます。三島由紀夫全集別巻では青焼きコピー台本の写真版が付録。

パンフとATGニュース


複雑な彼

島耕二監督、昭41、大映。カラー。出演:田宮二郎、高毬子他。原作:「複雑な彼」。ソフトあり。

ヴィデオパッケージ


愛の渇き

蔵原惟繕監督、昭42、日活。パートカラー。出演:浅丘ルリ子、石立鉄男他。原作:「愛の渇き」。☆モノクロ映画だが、ラストの方に2シーンだけ、カラーのシーンがあるのを実際に観て確認しました。単色着色ではなかったです。ゴダールがほめたらしいです。


黒蜥蜴

深作欣二監督、昭43、松竹。カラー。出演:丸山明宏、木村功他。原作:「黒蜥蜴」。ソフトあり。備考・三島出演。☆三島出演にはいろいろと裏話があり、当時の『週刊朝日』に載っていた記事「『黒蜥蜴』で三島が三度目の映画出演」によると、三島は当初明智役を希望したものの既に配役は木村功に決定した後であったため、松竹側が〈三島がハク製になるまでのいきさつを回想形式で入れることを申出、ようやくOKになった〉という。またこれには、英語字幕版の海外版ソフトがある。英語版のヴィデオパッケージを見ると、アルモドヴァルやジョン・ウォーターズと比較されている文章が出ているのは、この映画のキッチュ趣味を突いているだろう。

スチール写真の一部


人斬り

五社英雄監督、昭44、フジテレビ、勝プロ、大映。カラー。出演:勝新太郎、石原裕次郎他。ソフトあり。備考・三島出演。☆海外版タイトルは「Tenchu」(天誅)。この英語タイトルでヴィデオが出ている。☆☆パンフあり(「大映グラフ」)。


潮騒

森谷司郎監督、昭46、東宝。カラー。出演:朝比奈逸人、小野里みどり他。原作:「潮騒」。☆稿者未見。


音楽

増村保造監督、昭47、行動社、ATG。カラー。出演:細川俊之、黒沢のり子他。原作:「音楽」。ソフトあり。☆これは、御存知の如く、三島生前に映画化寸前までいった作品。その時は中村登監督、岩下志摩が主演予定だったのだが、結局つぶれてしまった。☆☆しかし中村登はその後もシナリオを雑誌発表(誌名御存知の方情報求む!)し、三島ノーベル賞受賞と共に映画化・・となったが三島はノーベル賞を逃し、おじゃんに。

ちらし。


潮騒

西河克己監督、昭50、東宝、ホリ企画。カラー。出演:山口百恵、三浦友和他。原作:「潮騒」。ソフトあり。☆山口百恵主演文芸映画シリーズの1本。

パンフ    宣伝用ブリキ製ペンケース


金閣寺

高林陽一監督、昭51、たかばやしよういちプロ、映像京都、ATG。カラー。出演:篠田三郎、柴俊夫他。原作:「金閣寺」。ソフトあり。

チラシ


The Sailor who fell from grace with the sea(「午後の曳航」)

ルイス・ジョン・カルリーノ監督、昭51、M・ポール=L・J・カルリーノ・プロ、日本ヘラルド。カラー。出演:サラ・マイルズ、クリス・クリストファーソン他。原作:「午後の曳航」。ソフトあり。備考・日米合作映画。☆これの日本向け宣材には、三島の「午後の曳航」創作ノートの一部がついている。尚、日本版ソフトには、高橋睦郎氏による解説が付されている。

たとう入りの宣材  パンフ


幸福号出帆

斉藤耕一監督、昭55、悶文グループ、三宝プロ、東映セントラルフィルム。カラー。出演:藤真利子、倉越一郎他。原作:「幸福号出帆」。ソフトあり。

パンフ


愛の処刑

野上正義監督、昭58、ENKプロモーション。カラー。伊藤文学製作。出演:御木平介・石神一他。原作:「愛の処刑」(榊山保名義)。ソフトあり。稿者未見。☆当時の『薔薇族』という雑誌が特集を組んでいてそこでスチールをみられます。


Mishima : A Life in Four Chapters

ポール・シュレーダー監督、昭60。カラー。出演・緒方拳、他。原作・「金閣寺」「鏡子の家」「奔馬」他。ソフトあり(海外版のみ)。備考・日本未公開。だが、直輸入版の、烏丸せつ子のヘアシーンのみカットされたビデオならレンタル屋でみかける。DVDもあり。☆垣井道弘『MISHIMA』(飛鳥新社)というこの映画のルポ本あり。☆☆下記の準備稿では、実際にはカットされた「癩王のテラス」のシーン掲載。

ポスター

台本(準備稿)


潮騒

小谷承靖監督、昭60、ホリ企画、東宝。カラー。出演:堀ちえみ、鶴見辰吾他。原作:「潮騒」。ソフトあり。

パンフ


鹿鳴館

市川崑監督、昭61、MARUGEN-FILM、東宝。カラー。出演:浅丘ルリ子、菅原文太他。原作:「鹿鳴館」。☆ソフトなし。シナリオは「キネマ旬報」に掲載。フィルムセンターの市川崑特集でみてきました。恐らくテレビでは放映しないと思います。

パンフ


L'Ecole de la chair(「肉体の学校」)

ブノワ・ジャコ監督、平10。カラー。出演:イサベル・ユベール、ヴァンサン・マルチネス他。原作:「肉体の学校」。ソフトあり(海外版のみ)。備考・フランス映画。☆英語題名「The School of Flesh」。こないだアテネフランセで日本語字幕版観てきました。






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