第1回定時制教育を考える会

報告

事務局長 平野和弘

9月30日(日)第1回「定時制教育を考える会 −浦商からの発信−」を開催した。今回は世話人会が主催し、浦商教職員、父母、卒業生、そして、在校生の協力の下、盛況な会であった。当日は浦商の文化祭でもあり、案内を発送した以外でも多数の参加があり、また発言もあり、充実した議論ができた。

会場である教室では会が始まる前の午前10時〜午後1時まで、父母と給食室が中心で取り組んだ、定時制紹介をおこなっていた。写真で綴る定時制1年間の行事や、各クラスの学級通信、美術の生徒の作品、写真での給食の説明、6月28日の公開授業の授業案などの資料、卒業文集などが展示され、参加者は定時制に対して認識を深めてくれたようだった。

「定時制の生徒は温かい職員の方、父母の方に囲まれていて、その中で明るくまっすぐに生きているなあと思いました。今後ともこのような活動をしてください。定時制のイメージがどんどん良くなっていくと思います。」20代の女性の声である。

第1部は午後1時から2時まで。「浦商ってどんな学校−教師からの発表−」と題し浦商の学校づくり、授業に光を当てての報告の場にさせていただいた。

まずは、平野が、今浦商で取り組んでいる教育課程の自主編成作業の取り組みの経過と、そこに行き着くに至った「生徒が主人公」の学校づくりの経緯を述べた。そして、今取り組んでいる教育課程の自主編成作業から、私たちが生徒に卒業までにつけてもらいたい8つの力を示すことになった。

以下のメモがその話の流れである。

 

1,教師が一生懸命の学校だった。

2,生徒が変わる実感を持った教師がいた。

3,生徒同士が関わるという作業にかけてみた。

4,生徒が学校の主人公であるとの言葉に掛けてみた。

5,生徒自身が仕切れる場所を用意したかった。

6,それは・・・なぜか・・・

7,しかし、それだけで彼らの「力」が育つわけでもないと知っていた。

8,授業計画、すなわち教育課程に目が向いていく。

9,でも、普通の学校でなされる教育課程の作り方はしなかった。

10,       青年を語り、目の前にいる彼らを語り、彼らのいいところ、積極的に評価できるところを語り続けた。

11,       そして、私たちは彼らにつけてもらいたい力として、8つの柱を準備した。

それは…

1,自分を表現する力

O         私はこんな人だと、他の人に伝える力

2,他者認識と自己認識ができる力

O         他の人のことを思い、自分がどんな人間であるか、その中で考えることができる力

3,主権者として活動できる力

O         社会の主人公として社会を知り、自分で考え、自分の意見が言えて、自分で決定できる力

4,労働をするための主体者像を確立できる力

O         働くために必要な力

5,生活主体者としての力

O         豊かで、健康に生きていくための力

6,文化を享受できる力

O         文化に接し、理解し、継承して、自分で文化を創造していく力

7,『世界』を読みとる力

O         人間が一人で生きているわけではない、その元を探る力

8,真理を探究する力

O         何が正しくて、正しくないか、それがわかる力

 

12,       それは、決して高望みでも理想論でもなく、今の彼らから出発した私たちの願いだった。

13,       今、私たちは、授業にこの思いをのせようとしている。

14,       それが完成したときに、浦和商業高校定時制の教育計画ができあがる。

15,       今、その途上であるとの断りをしながら、2つの授業を紹介したい。

 

そして、その実際の証拠としてどんな授業をおこなっているか、数学の山本と英語、和田から、参加者を生徒に見立て、模擬授業をおこなってもらった。

「文学的数学の授業」と題した山本の授業は、マイナスの計算式を暗記で覚えることではなく、その実体としてマイナスがどんな意味を持ち、それを足したり、ひいたりまたは、かけたりする事の意味を考えさせる授業であり、実際に負債と貯金からの実例をひきながら分かり易く授業をおこなってくれた。

「これは誰が書いた詩だ!の英語の授業」と題した和田の授業は、常に目線を生徒に向け、そして、生徒への発問から、思考を促し、英語を媒介として歴史、社会を考えさせる内容となっていた。特に最後に答えを出さなかったのは、参加者に思考を続けさせることになり、とても印象深い終わり方だった。

この第1部では参加者が生徒となり、この授業に取り組んだ。「学ぶ」ことの意味を少し考えることができたのではないだろうか。また、それが、「学校とは」のといにつながれば、これからの「考える会」の活動の方向が見えてくるだろう。

 

第2部は、「大いに語ろう浦商定時制−定時制ってどんなとこ−」と題してのシンポジウムであった。定時制をアピールするとともに、様々な立場から定時制をどのように捉えているのかを、交流させ、その存在意義を考えることができればと企画したものだった。

司会・コーディネイトの浦商職員の石川は事前に、数度、シンポジストとは打ち合わせを持ってこの会に取り組んだ。

「学校が俺をかえた」と題し卒業生、重原健二君。「私の居場所クラス」と題し同じく卒業生原田麻紀さん。「親も成長できた浦商」として元PTA会長田中さえ子さん。「浦商のうらおもて」と題し現生徒会長加藤祐介君が、それぞれ発表してくれた。

重原君は、自分が不良だったこと、それはなぜか、そして、浦商定時制で何を学び、どんな力を培ってきたかを感動的に報告してくれた。特に、今回彼の発言からは、学力の問題、定時制の進路保証の問題を絡め、定時制は特別ではなく、誰でも学ぼうとしている人には道が開けているのだと行った確信を与えてくれたのである。

原田さんは、自分が事故にあったときでも、クラスのみんなが温かく迎えたことを引き合いにクラスが自分の居場所であったことを述べた。そしてそれは自分たちで創り上げたのだと確信を持って報告してくれた。クラスという空間での出来事を、様々な衝突や、意見の対立を乗り越えて心の居場所を先生と学校の仲間と共につくることができたと述べ、特に、不登校の経験をしてきた者たちが持っている力こそがとても大切だと述べた。

田中さんは、親の立場で、この学校と共に育っていった自分を自覚的に報告してくれた。息子のおかげでここの定時制で真の教育を知ることができたと述べてくれた。また浦商の自由が管理になれている親には特殊にみえ、しかし、それだからこそ、社会勉強の場でもあるといった発言をした。

最後に現生徒会長の加藤君は、浦商の行事づくりのすばらしさや、意義を述べ、しかしそれを創り上げる間での苦労をリアルに報告してくれた。特に授業において生徒が参加しない状況を嘆く言葉は、今の学校の現状を参加者に訴えることにもなった。

そして、これらの発表を受けて、会場とのやりとりとなった。

議論は、「授業に出ない、学校に出ない生徒の問題を学校、生徒がどう考えているのか」から始まった。「出ないのではなく、出ない理由があるのだ」といった意見や、「そこを理解してもらう場所が必要だ」との意見が出されたり、また「でない子によって、でている子の居場所が侵害されている事実」や、「でない子を基準とする学校づくりに対する」異議や意義が出されたりもした。

また、そこから、「生徒の学力保証」、「進路保証」についての質問、意見が出されたり、定時制での「学力」、学校で培う学力とは、…と議論は充実していった。

最後に和光大学の梅原利夫氏が「学校は人と人が心を通じ合い、自分の人生をつくっていく場」であると述べられ、そこ値打ちを見いだしたいとまとめられた。

保護者、卒業生、学生、そして、全日制のPTA会長、副会長までもが参加してくれたこの会も最後は、文化祭終了の放送と戦いながら幕をしめることになった。

今回ここで出された問題点を整理し、次回の「考える会」に活かしていきたい。

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