華やかなパーティーを舞台に乳ガン患者の野望が渦をまく

黒 皮 の 手 帖

ではありません

史上最凶の乳ガン患者外伝

第17回GE横河メディカル・ESSAY大賞

優秀賞受賞についてのよもやま話

 放射線も終わって、治療の方も一段落したころになると、今度は家計の方が大変になってきた。ほーら、やっぱりね。なんせ年度末の忙しい時期に、ダンナがインターネットばかりやってて、ほとんど仕事をしていなかったんだから。しょーがないので、夏休みの自然教室の講師のアルバイトしたりして細々と稼いでるみたいなんだけど、それだけじゃどーにもならないし。このまま行くと、秋には完全に干上がる計算だ。なんかパーッと稼げる手はないかと思ってたら、実家から新聞の切り抜きを送ってきた。なんとGE横河メディカルという会社で、乳ガンに関するエッセイを募集しているとゆーじゃありませんか。しかも大賞50万円、優秀賞でも20万円だって。これこれこれですよ。さっそくダンナと、賞金ゲットのための作戦を立てることにした。

 調べてみると、もう16年もやっている伝統のコンテストで、毎年何百人もが応募するらしい。げ−っ、意外と狭き門じゃん。おまけに今年のテーマは、乳ガンについてのマジメな提言をしなけりゃならない。めんどくさそーなんでやめちゃおかなーと思いつつ、審査員の名前を見ると、おおっ、かの××作家・渡辺淳一センセーではないですか。他にも文春の元社長とか、GEのお偉いさんとか、オジサマばかり。つーことは、他の人が持っていない「乳ガンヌード」というカードが効く可能性は大きいぞ。過去の受賞作のなかにも、センセーの作品ばりに「立った」の「濡れた」のを連発してた奴もあるし。よーし、真面目な作品が集中し、競争率が高くなるであろう大賞は、この際パス。始めから変化球勝負で、優秀賞を目標にしよう。題名も「再生・乳ガンヌードの記念写真」と、あまりにもウケ狙いが露骨だなー。

 でも、あまりおチャラけててもダメだろうから、いつもの調子の文体はNG。それに「提言」と言えるような、明るい未来が垣間見える主張みたいなもんがないとね。ヌードについても、どっかの女優みたいに「必然性があったので脱ぎました。」という姿勢が必要だ。エッセイとしての盛り上がりやカンドーも不可欠だし。げ−、これっていつも忌み嫌っている分野じゃん。そんなわけで作品は「病気までも表現活動のひとつとして、共に闘うゲージツ家夫婦の愛の物語」てな感じの仕上がりになっちゃった。いずれGEのHPにでも発表されるのを読んでもらえばわかると思うけど、日ごろ「史上最凶の乳ガン患者」を読み慣れている目には、なんだか胸焼けがするような内容かも。しかーし、ねらいは違わず、しっかり優秀賞を射止めることができました。これって、ガン治療に使う分子標的薬が効いたみたいに嬉しい。少なくとも、1ヶ月分の生活費はゲットだっ。

 発表から表彰式まではblogにある通りだけど、心配になったのはHPの存在。なんせ受賞作とは、言ってることがぜんぜん違う部分がいっぱいあるからね。年もサバ読んでるし。応募した時の名前ときたら「暢子」だぜ。うぷぷぷぷ。とくにピンクリボンの悪口言ってるのがバレて「受賞取り消し!」なんてなったらどうしようなんて、よけいな心配をしちまったよ。あーみんなビンボが悪いんや。で、当日は、マトモなスーツを持っていないということもあるけど、なるべく違うイメージで行こうと思って、ご覧の通りのお着物で参りましたのよ。でも、パーティーでダークスーツのオジサマ達に囲まれている様子は、どーゆーわけかどっかのママみたいですわね。おかげで渡辺センセーにも文春の元社長サンにもGEのお偉方にも、「こいつはカタギじゃないに違いない。」という感じで、思いっきり警戒されてたようですけど、気のせいかしら。それにしても大企業というところは、同じ会社の人間同士でも、こーゆー機会を利用して、盛んに名刺のやり取りをするもんだというのにビックリこいただよ。さーて、次の稼ぎも考えなきゃ。

「こりゃあママも隅におけんなー。」

「嫌ですわセンセ、おーほほほほ。」

とは言っていません。

「センセ、あたくし今回は狙わせて頂きましたのよ。」

「う〜ん、何のことかなー。」

「あーら、オトボケがお上手ね。」

とも言っていません。


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