こんな本を書いています

PROFILE

川上洋一/自然科学イラストレーターならびにライター。1955年東京・新宿出身。1970年代より一貫して、自然解説書の製作・著述に携わる。自然観察のインストラクターや野生生物の調査、長野県・諏訪の山村における田舎暮し、里山の保全運動といった経験から、昆虫・両生類・里山・環境教育・アウトドアライフなどを専門とする。マスメディアではTV番組の昆虫の解説者としても活動。現在、日本昆虫協会理事、トウキョウサンショウウオ研究会事務局、西多摩自然フォーラム、日本鱗翅学会・日本鳥学会会員。

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新刊のご案内 

絶滅危惧の生きもの観察ガイド<2009年8月・東京堂出版・税込2100円>

A5版 160P(口絵カラー16P) ISBN978-4-490-20676-0

 絶滅危惧の事典シリーズも担当できる範囲は終わってしまったので、自転車操業もいよいよ危機かと思ったのだが、夏休みを当て込んだ「絶滅危惧動物を見に行くガイドブック」という企画がすんなり通り、なんとか一安心。ところがガイドブックというのはなかなかの難物で、アクセスやら問い合わせ先やらとにかく確認しなくてはいけない情報が多いうえ、各項目に使う地図や写真も手配しなければならない。本来なら新たに一ケ所ずつ足を運んで取材することが理想だが、そのための経費なんぞはもちろん出ないし、なにしろスケジュールがタイトすぎるのでほとんど不可能である。あまり以前の記憶を頼っても意味がないので、古い知り合いに電話やネットで取材した場合も少なくない。

 それでもなんとか夏休みに間に合うように書き上げたのだが、写真の手配が進まずに作業は完全にストップしてしまった。有名な観光地などは地元の自治体などが持っている場合が多いものの、ご多分にもれずのお役所仕事をしているところが多く、問い合わせをしても返事がかえってくるまでに時間がかかる。なかにはライブラリーなみの使用料を吹っかけてくる所もあって、ほんとに広報活動をする気があるのか疑ってしまうほどだ。さらに穴場的な場所についてはほとんど個人に頼むしかなく、登山記念のスナップをプリントからスキャンし、トリミングして使用などという場合もあった。最終的にはそれでも間に合わず、仕方がないので一日に数カ所を車で回って自分で撮影してくるという泥縄を何度も行うはめになった。一回の走行距離は少なくても約500km。ちなみに自車にはETCは付けていない。写真の手配にまるまる1ヶ月を要したため、夏休み前の発行はとんだ皮算用になってしまった。12月には西日本編も出る予定なのだが、写真集めを思うと今から頭が痛い。


絶滅危惧の動物事典<2008年12月・東京堂出版・税込3045円>

A5版 272P(口絵カラー16P) ISBN978-4-490-10747-0

 このシリーズの最初の一冊である「絶滅危惧の昆虫図鑑」を手がけた時には、よもやここまで書くことなるとは思ってもみなかったが、もはや行きがかり上逃げるわけにはいかなくなってしまった。かくして残りの哺乳類、爬虫両生類から、クモやエビカニなどの無脊椎動物までの絶滅危惧種をまとめたのがこの一冊である。爬虫両生類についてはアマチュアとして多少の心得があるものの、哺乳類、とくにその半分近くを占めるコウモリについては、全くの手探り状態であった。助言をいただいた「コウモリの会」の会員には感謝のしようがない。実は動物のレッドデータブックには、これら以外にもカタツムリを含む貝類と淡水魚があるのだが、さすがにそこまでは手を広げられず出版社には勘弁してもらっている。

 今回の口絵写真も多くの知人に世話になったが、解説の量は哺乳類と爬虫両生類がほぼ同数であるにもかかわらず、写真の数は後者が倍近くも多い。危うくトカゲとヘビとカエルばかりが口絵を占めるところだった。生物写真でこの分野の人気がそれほど高いとは思えないので、ネットワークの偏りが露骨に表れた結果と言えよう。自身の趣味がついつい全面に出てしまったことに反省しきりである。ただし小型サンショウウオ5種だけだが、自身のイラストを使うことができて、生物イラストレーターとしての面目を多少なりとも保った次第。


絶滅危惧の野鳥事典<2008年1月・東京堂出版・税込3045円>

A5版 270P(口絵カラー16P) ISBN978-4-490-10730-2

 鳥屋と虫屋というのは昔から仲が悪い。鳥屋から見れば虫屋は自然破壊の張本人だし、虫屋から見た鳥屋はわかりもしない分野にまで首を突っ込んで自分たちの価値観を押し付けてくるうっとうしい存在に他ならない。一応著者は虫屋に分類されているので、そんな人間が鳥の保全についての本を書いたとなれば、鳥屋からは非難の石つぶてが飛んできてもおかしくはないと予想していた。なにしろ、本文の中では、日本の野鳥保護については避けて通れない存在である「日本野鳥の会」については一言も触れていないばかりか、今までの愛鳥家たちの活動の疑問点をいくつも挙げているのだ。そもそもこの本は「絶滅危惧の昆虫事典」と同じスタンスに立っていて、鳥そのものについての解説にはスペースを裂いていない。鳥を通じて日本の自然とその利用の歴史がアウトラインとしてつかめれば良いと考えていた。その点でも、鳥そのものに関心をもつ多くの鳥屋には内容的に不満があってもおかしくはない。

 しかし書評を見ると、野鳥の会の機関誌では「独自の視点」と扱われてはいるものの、バードウォッチャー向けの雑誌では「辛口の提言をした意味は大きい」とかなり好意的に評価されているようだ。虫の本では昆虫学者に重箱のすみを突かれていることを考えると、ひょっとすると鳥屋の方が懐が深いのかも知れないと、ちょつと認識を改めた次第である。

 ●書評についてはこちら


世界珍虫図鑑 改訂版<2007年6月・柏書房刊・税込4935円>

B5版 220P(オールカラー) ISBN978-4-7601-3168-6

 下記の「以前出した本から」で紹介している「世界珍虫図鑑」は、発行所の解散で永らく絶版状態だったが、6年ぶりに大幅に加筆して、柏書房より「改訂版」として出版されることになった。旧版では紹介できなかった新発見の目・マントファスマに、モルフォチョウ・シャクガモドキ・クリキュラ・コロフォンといった近年話題になっている4種を加え、巻頭で昆虫の生息環境について解説し、さらに巻末に「珍虫紳士録」30種(写真は無し)を掲載したので、約1割ページが増えている。写真もかなり差し換えられた。ただし評価が高かった上田博士の「昆虫の分類表」が割愛されたのは実に残念である。

 話が決まってから出版社の都合や思わぬ障害もあって、結局まる1年かかってしまった。旧版に少し手を入れればすぐに出せると考えていたのは大誤算で、ようやく出版に漕ぎ着けたのは、諸国を永年放浪していた浪人がやっと仕官できたような心境である。

 旧版からの時間が長かったため、続編を出せるだけの材料は揃えてあるのだが、写真収集が難しいものばかりで、しばらくは日の目を見そうにない。「珍虫紳士録」にはその一部を紹介してあるものの、幻の続編になる可能性も高そうである。


絶滅危惧の昆虫事典<2006年12月・東京堂出版刊・税込3045円>

A5版 266P(口絵カラー16P)  ISBN4-490-10705-6 

○2007年5月に重版

 3年ぶりの新刊である。2006年夏に刊行された環境省のレッドデータブック(RDB)昆虫編から100種類をピックアップして、日本の自然の変遷に従って彼らがどのように衰退していったかを解説したものだが、執筆開始の時点ではまだRDBは刊行されておらず、資料集めには苦労したものの、かえって固定概念に縛られずに書くことができた。ところがその結果として、RDBの見解をあちこちで否定するばかりか、環境省の弱腰ぶりをこき下ろし、半可通の自然保護運動家を批判し、ついには日本人の経済最優先の生き方に疑問を投げかけるといった内容になってしまった。ギフチョウの項などは、メディア批判だけを展開して肝腎の昆虫の生態については一言も書いていない。もっとも、はじめから詳しい生態を解説するつもりはなく、昆虫を通して日本の自然のアウトラインが浮かんでくるような内容を心掛けた。おかげで話は日本の畜産の変遷に行ったかと思うと芭蕉の句へとぶといった状態で、かなり散らかった印象は否めない。RDBの副読本のようなつもりでいた編集者にとっては、狐につままれたようなものだろう。しかし、通俗的自然保護を批判した内容のせいか、昆虫採集の意義を説く日本昆虫協会の会長でフランス文学者の奥本大三郎氏に、序文を書いていただけたのはたいへん嬉しい。

 この本では、すべての種類に資料画をつけたが、これはもちろん自分で描くほどの時間の余裕があるはずはなく、里山の本のシリーズで世話になった若手イラストレーターの浅野文彦氏に依頼した。ただし資料もろくにないうえ、普通の編集者よりはるかに厳しいチェックが入ることになって、かなり気の毒なことをしたと思う。

●後日談

 読者の反応については、「月刊むし」「ゆずりは」「TSU-I-SO」などの書評や、「六本脚」 「南陽堂」といったネット書店のコメントにあるように、愛好家からはかなり好意的に扱われた。ところが昆虫学者の間ではそうでもないらしく「日経サイエンス」4月号では、大阪府立大の石井実(昆虫版レッドデータブックの評価検討委員)が批判的な書評を書いている。無責任な行政や、半可通のマスコミ・自然保護活動家を痛烈に批判しているのが、お気に召さないようだ。特にギフチョウの項には強く反応しているが、このページの一番下で紹介しているコラム「ギフチョウ保護をめぐる常識のウソQ&A」は、本の内容とかなり重なっているので、書評と読み比べてみると面白いかも知れない。石井実は、その後も慌てたように「昆虫と自然」「遺伝」などの雑誌に、昆虫保護についての記事を矢継ぎ早に書いているところを見ると、この本が与えた影響も小さくなかったのだろうか。だとすれば、問題提起を目的にした本だけに、著者名利に尽きるというものである。


以前出した本から

ドキドキワクワク里山探検シリーズ

水田は生き物のゆりかごほか全5巻

<2003年4月・旺文社刊・セット税込み15750円>


 企画持ち込み同然で、全面的に関わったシリーズ。監修者の明治大学教授・倉本宣氏は、かつて共に環境教育に携わった30年来の友人で、現在は保全生態学を専門にしているという、このシリーズにはうってつけの人材である。里山保全団体・西多摩自然フォーラムのメンバーにも、さまざまな面で協力いただいた。

 内容は、里山を4つの環境に分類して、そこで見られる生物との関係を「雑木林とギフチョウ」「鎮守の森とフクロウ」「水田とトノサマガエル」「人里とタヌキ」「里山ってなんだろう」の5巻で解説する。眺めて楽しむ里山本が多い中で、あえて使えることにこだわり、調査や観察のハウツーもマニアックなくらい盛り込んだ。

 全編をイラストで構成したことも特徴の一つ。写真全盛の時代に古臭く思われるかも知れないが、里山の仕組みを説明するのが目的なので、イラストでなければ表現できないことが少なくない。参加した自然科学系のイラストレーターが、ベテラン・中堅から若手まで、贅沢な顔ぶれが揃ったおかげで、生き物の羅列や雰囲気だけに終わっている多くの里山本とは一線を画することができた。もっとも、なんとか時間を工面して、自分でもイラストレーターとして担当した巻の仕上がりは、腕が落ちていることを如実に表しているのだが…。

 いずれにしても「使える本」なので、小学校高学年が対象というよりは、里山に関心はあるものの、どうアプローチして良いか分からない大人にこそ役立つかも知れない。ただし、店頭に並ばない図書館向け商品のうえ、一冊ずつの分売は不可でセット15,000円なので、ただでさえ本の売れないご時世に苦戦中である。

 関心のある方は、旺文社営業部 Tel.03-3266-6429 Fax.3266-6412まで。

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 世界珍虫図鑑<2001年4月・桜桃書房刊・絶版>


 北九州自然史博物館の上田恭一郎博士監修。100万種を超えるといわれる世界の昆虫の中から、オバケハネナシコオロギ、ヨロイモグラゴキブリ、カイジュウジラミなど、注目すべき100種を選んで解説した本。すべての目(もく=グループ)の昆虫がカラー写真で掲載されたのは日本で初めて。付録となった上田博士編の「世界の昆虫の分類表」は、今まで類を見ないものとして、専門家にも高く評価された。

…しかし。発行元だった人類文化社は解散。現在、ほぼ絶版のため、入手は困難のようだ。書評や読者ハガキでの評価は高かっただけに残念。とくに分類表については、日本の昆虫分類に欠かせない存在なので、研究者も困っているらしい。


その他の著作一覧

●「かならずみつかる!昆虫ナビずかん」2〜4(2002・旺文社)図書館向け

●図解でわかる・いのちを学ぶ環境学習「まちと里山の小さないのち(金子美智雄監修・2002・ほるぷ出版)図書館向け

●OHTOH MOOK「親子de採集&飼育カブト・クワガタ」「同2」(2001-2002・桜桃書房)

●テーマ発見!総合学習体験ブック「田んぼへいこう里山探検をしよう(金子美智雄監修・2000・ほるぷ出版)図書館向け

●「憧れの虫を飼おう!世界のカブト・クワガタムシ(2000・桜桃書房)

絵本(イラスト担当)

●「からだを知る本」1,4,7,10,12巻(山田均他著・1990〜92・草土文化)

●誰も知らない動物園「ふしぎドーム昆虫園」(三枝博幸著・1989・農文協)

●自然の中の人間シリーズ・川と人間「川に住む生き物たち」(森下郁子著・1989・農文協)

●「自然はともだち」(1976〜2001・東京都環境局=環境保全局=公害局)

ほか図鑑・雑誌・挿画・装丁など多数

コラム・報告書など

●「チマチョゴリと捕虫網」-いわれなき「採集するな!」は大衆によるテロ行為だ!(「蝶研フィールド」通巻124号・1996・蝶研出版)

●「トウキョウサンショウウオの悲鳴が聞こえる」(草野保氏と共著・「サイアス」4月号・1999・朝日新聞社)

「トウキョウサンショウウオは生き残れるか?」-東京都多摩地区における生息状況調査報告書-(草野保氏と共編著・1999・トウキョウサンショウウオ研究会)

「ギフチョウ保護をめぐる常識のウソQ&A」(「蟲と自然」3・2000・日本昆虫協会)