長野オリンピック情報システムのOS/2 Warpレビューワーズガイド


早春の妙高山 - 写真: 藤田秀一 (1995)

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これは長野冬季オリンピック大会1998用のオリンピック情報システムについて、多少技術的な記事を書きたい人のための非公式なwebです。公式なものでなく、急いで作ったため内容に多少の誤りもありますので、自分で確かめてから記事にしてください。

注:レビューワーズガイド(Reviewer's Guide)とは、これをもとに製品を詳しく吟味できるような手引き書で、主に雑誌記者がこれを使って製品の紹介記事を書けるようにしているものです。Microsoft社やIBM社などコンピューター業界で広く使われている手法で、私もチョットここでまねてみました。

オリンピックで活躍するOS/2 Warp

A Summary of OS/2 Warp in the Nagano Olympic Information Systems

第18回オリンピック冬季大会、長野1998が2月7日から22日まで開催されますが、これにはOS/2 WarpとOS/2 Warp Serverが大活躍しています。

長野オリンピック冬季競技大会組織委員会(NAOC)では、IT(Information Technology、情報システムInformation Systemのヨーロッパ的な呼び方)スポンサーのIBM Corp.の協力で、現在3つのシステムを動かしています。

1つは全世界のみなさんがインターネットのブラウザーを通して見れるオリンピック公式ホームページ(http://www.nagano.olympic.org)です。サーバーはRS/6000-SPで行なっていて、世界の各地からのアクセスは日本・東京と米国・3か所(Schaumburg, IL; Bethesda, MD; Columbus, OH)と合計4か所にあるサーバーへ自動的に振り分ける形で運営しています(複数サーバーのsingle domain service)。

2つ目は、登録されたメディアの方々を含めたオリンピックファミリー(オリンピック関係者8万人弱)用のイントラネットシステムで、これについては詳しく後述します。

3つ目は、NAOC事務局運営システムで、ネットワーク(LAN、長野と東京間のWAN、電話回線でダイアルアップ)、OAシステム、給与システム、人事システム(人事システム for OS/2)などを行なっており、クライアント側はIBM ThinkPad上でOS/2 Warpを使い、サーバーはS/390、AS/400、IBM PCサーバーなどを使っています。OAシステムでは、Lotusアプリケーション(WIN-OS/2----Windows 3.1相当---上のAmiPro、1-2-3、Freelance、ApproachなどとLotus Notes)、サーバー側はWarp Serverで、LANと電話回線ダイアルアップで電子メール、電子掲示板、ファイルの共有、問題管理などに使っています。会場のデザインにはRS/6000で、A+E、TiPS、DB2/6000などを使っています。

LANはすべてトークンリング(16Mbps)、通信機器・回線は主要部分でATM・45Mbps専用線を使っています。

上で2つ目の、長野オリンピック・イントラネットシステム(これを通常長野オリンピック情報システムと呼んでいます)では、4〜5千台のIBM PC 350、ThinkPad 760XD、IBM 4317 Network Printerが11月〜1月に長野市とその周辺の競技会場・運営会場にインストールされていますが、これは全てOS/2 Warp 4日本語版または英語版をクライアントに、Warp Server英語版または日本語版(実際はOS/2 Warp 4の上にWarp ServerのLAN Server 5.0をかぶせている)をサーバーに使っています。パソコンにソフトウェアをインストールする作業は東京の「PC Factory」でOS/2のCID機能(Configuration, Installation and Distribution)をふんだんに使い多量インストールを行ない、また各会場で個々のパソコンはパワーオンで起動する時に(または深夜に全部のパソコンを)CID機能で各ソフトウェアのレベルをチェックして違っていれば自動的にレベルをそろえるというSD(Software Distribution)を行なっています。

長野オリンピックシステムは、アプリケーション的には、a)リザルト・システム(Results System)、b)Info'98、c)大会運営(GM - Games Management)の3つに分れています。

リザルトは、1994年リレハンメル冬季大会の時のホスト-OS/2 1.3/Communication Managerのシステムから、1986年アトランタ夏季大会でOS/2、DB2/2、DDCS/2、CM/2、LAN Serverのシステムに変更されました。

Infoはアトランタ夏季大会ではOS/2-VisualAge SmallTalkとAS/400のクライアント・サーバーであったものを、1996年の秋から始まった長野オリンピック・プレ大会用にRS/6000-SP2のサーバー(DB2)、1997年の春にクライアントをOS/2 Warp-Netscape Navigator 2.02i-Lotus Notesに変更しています。

GMは宿泊システム(Accommodation System)、認証システム(Accreditation System)などの大会運営用の各種アプリケーションの総称です。クライアントはすべてOS/2ですが、サーバーは用途に応じてS/390(認証など)、AS/400(輸送など)、PC Server (宿泊管理、ボランティア管理など)を使っています。

全般に、リレハンメル大会ではOS/2 1.xの16ビットでインフラとアプリケーションが書かれていましたが、アトランタ大会でOS/2 2.xの32ビットでインフラ作りとSmallTalkなどを利用した先進のオブジェクト指向技術が使われました。長野大会では、アトランタ大会のインフラにリレハンメル大会のアプリケーションを載せて、プルーブン・テクノロジー(確立した技術)を使うことが強調され、その中でもInfoに先進のインターネット技術などが採用されています。

各システムを詳しく見てみますと、a)リザルト・システムは、各競技会場の競技予定、競技結果をレポートするもので、OS/2 Warp-OS/2 Warp Serverのクライアント・サーバーシステムです。テレビ解説者用にリアルタイムに情報を出すCIS (Commentator Information System)も含めて、OS/2 Warpの迅速性・信頼性を利用していて、すべて英語版で動いています。クライアント・サーバーシステムはバックアップシステムもある2重構造で、何か万一事故があれば切り換えられます。タイミング・インフォメーション・スポンサーSeiko社のタイミング装置(屋内外表示装置など)との入出力は、RS-422ケーブルを通して、パソコンの9600bpiシリアルポート処理で行なっており、アナログ・データともうまくやり取りできるOS/2 Warpの特長を生かしています。各競技会場のスタートリストや競技結果は、通信回線(NTT提供)で中央の大型コンピューターIBM System/390上のDB2(Database 2)に集められ、その他の会場にも送られ、そこの情報システム事務室でのプリントアウトを多量にコピーして(Xerox社提供)、各部屋にもボランティア(コピー配布班またはランナーといっている)が配ります。ホスト上のDB2データは直ちにRS/6000上のDB2/6000に送られて、Infoに利用されます。

b)Info'98では、競技結果およびオリンピック競技にまつわるあらゆる情報(過去の記録、選手の履歴、各国チーム、国、気象情報、会場を結ぶシャトルバスの時刻表、記者向けのオリンピック・ニュースなど)を見ることができます。上記のように、日本で新しくインターネット・ブラウザー機能を生かして作り直した、長野オリンピック競技大会ご自慢のシステムです。Info'98パソコンは、オリンピック会場のあらゆる場所に置かれていて、この使い方の指導や問題点の解決はやはりボランティア(ユーザーサポート班といっている)が行ないます。

クライアント側で使っているのは、Netscape Navigator 2.02i for OS/2 Warp (Netscape Navigator 3.0相当の機能があることは有名な話)で、起動時にnetscape.exe -kと指定してキオスク・モード(Kiosk Mode)で動かし、これだとNNの画面上方にあるボタンはすべて削除され、オリンピック用にすべて作り直したボタンでナビゲーションします。画面の1998年競技結果(1998 Results)などのボタンを押すと、通信回線を通してRS/6000のICS (Internet Connection Server for AIX)につながり、DB2/6000データベースから必要な情報を取り出しますが、ここは部分はC言語(C SQL)で書いています。しかもInfo'98は日・英・仏の3か国語処理をやっていますが、これはICS側で<META>タグ感知機能ではなく、CONFIG機能で行なっています。

Info'98では、電子メールの機能もあり、オリンピックファミリー(ボランティアも含む)はお互いに連絡をとったり、インターネットへ電子メールを送れます。NNの電子メール機能ではなく、電子フォーム(E-form)なども使えるようになっているため新しく電子メール画面からNotes for OS/2クライアント画面に行き、Dominoを通してJavaScriptでRS/6000上のLotus Notes Serverに行って処理を行なっています。オリンピックファミリー間でお互いに連絡できるだけでなく、電子フォームでインターネット受信申込みをしたあとで送受信ができますので、みなさんがインターネットで受信する内容に7002921@naoc.co.jp (7002921は後述のアクレ番号)から「This E-mail is from MIKAMI, YOSHIHIKO at the Nagano Winter Olympics. It was sent using the Info'98 E-mail system to the following recipient(s):」という言葉で始まる電子メールをもらったら、これはInfo'98の電子メール機能で送られたものです。なお、Info用にあらゆるデータがこれまで用意され、また大会期間にも記者向けオリンピック・ニュースなどで用意されますが、このデータ・エントリーにはNotes for OS/2クライアントが利用されました。

c)GMは、オリンピック運営用のシステムで、これらは主にホスト(S/390、AS/400、PC Server)を中心としたシステムです。オリンピック宿泊システムなどのように通常の企業システムに似たものもあれば、認証システムや会場入館システムなどのようにオリンピック独特のシステムもあります。

認証システムはもともとバルセロナ・オリンピックでSEMA社がS/390ホストのDB2、CICSで開発したアプリケーションに、アトランタ・オリンピックでIBMがIBM 4303 Color Printerを使った認証カード印刷を追加し、長野オリンピックでは認証カードを入出国のビザとしても使っています。オリンピック・ファミリー8万人弱が全員首からぶらさげている葉書大の認証カード(別称アクレカード)は、7桁のアクレ番号、カテゴリー、姓名、役職、輸送コード、バーコードが印刷されていて、これを見てシャトルバスの乗車許可が行なわれ、各会場の入場管理は米国Sensormatic社のアクセス・コントロール・システム(Symbol Technologies社のバーコード・リーダーを含む)で行なわれます。このバーコードはPDF417と呼ばれる2次元バーコードで、スーパーやデパートで使われている1次元バーコードが最大24文字なのに対して、最大4000文字が使えますが、長野オリンピックでの実際は64文字を使っています。カテゴリーというのは、NAOC、E (Press)、P (Sponsor)などで、輸送コードはT4 (シャトルバスに乗れる)、ブランク(乗れない)などです。なお、認証カードのニセモノは(SAMPLEと書いてある)、中央通りにあるIBM Briefing CenterとJR長野駅東口のABN(長野朝日放送)ビルのIBM Internet Cafeで作ってくれて、ここは大人気のためいつも長蛇の列ができています。

ここで言葉の処理についてもまとめておきましょう。長野オリンピックでは日本語・英語・フランス語が公用語扱いを受けていて、あらゆる書類・パンフレット類が3種類でています。NAOCのOAシステムでは、IBM PCおよびThinkPadの日本語キーボード用にフランス語キー入力マクロを作り、日英仏語の混在はApproach日本語版がそのままできて、AmiProはOS/2 Warp下のWIN-OS2日本語版(Windows 3.1日本語版相当)でAmiPro英語版を動かしてやっています。Info'98は日英仏語を、完全に均等に扱っていますが、E-mailのみはフランス語の入出力ができません。リザルト・システムはすべて英語版で動いていて、選手名などもすべて英語名(つまりフランスの選手でもアクセント付き文字は使わない)でやっていますが、プリントアウトは英仏両語で出しています。公式ホームページは日英両語で出していますが、フランス語もニュースのみを扱っています。大会期間中も情報システムの運営には、ボランティアで「プリント用紙・Printer Paper・Papier pour les imprimentes」というような風にお知らせを作り、務めて3か国語を併記しています。そういえば、JR長野新幹線内でも1月末から、3か国語のアナウンスと電光掲示板表記が始まりました。

以上のように、長野オリンピックのインターネット公式ホームページWebを見ている人や一般観客で競技会場に来ている人には目に触れませんが、OS/2 Warpが大活躍の長野オリンピックなのです。なお、オリンピック情報システムの運営も1つの大きなプロジェクトになっており、その例はメインプレスセンターの例で見てください。

注1: '97年5月にOS/2コンソーシアム総会で、オリンピック関係者が長野オリンピック情報システムに関して話した内容を、OS/2 Warpについて多少現状に即して書き直したものです。この総会はプレスにも公開されていて、OS/2 Magazine(ソフトバンク)、OS/2 World(IDGコミュニケーションズ)、日経バイト、技術評論社などが出席したと思いました。また、その後下に述べる資料をもとに書き直しています。

'98年2月3日には、NAOCの笹川信義 通信・情報部長が、長野オリンピックのハイテクシステム(情報システム・Video On Demand・3Dテレビ)というメインプレスセンターでの記者会見で、長野オリンピック情報システムについて絵入りで詳しく触れています。また、プレス・レリースが'97年12月1日にITスポンサーのIBM Corp.(および日本IBM)から出ていて、また'98年2月にプレス・パッケージ(画面写真付き)がプレス向けに配布されていますので、プレスの方はIBMオリンピック広報(Tel. 026-228-4970, Fax. 026-228-5285)またはメインプレスセンターの情報センター(Media Information Center)で入手してください。また、お客さま用に、IBMから「オリンピック情報システム」、「リザルト・システム」、「CIS」、「Info'98」の4種類のパンフレットが英語日本語で出ています。IBM Briefing Center(026-234-4623)は長野市の中央通り、権堂(ごんどう)入口のそばの表彰式場(Awarding Ceremonies Venue)の近く(土屋ビル)にあります。Infoについては「クイック・レファレンス・ガイド」と称する小型小冊子(全14ページ)が、日本語版・英語版・フランス語版で出まわっています。

注2: 上記とは別に、長野オリンピック情報を直接世界の主な通信社(8社)に配信するWNPAシステム(ワンパ、The World News Press Agency)、IOC委員のみが使用する小規模のIOC Network(ホテル国際21や三井ガーデンホテルのIOCホテル、IOCメディア責任者のいるメインプレスセンターを結ぶ)などもあります。緊急時のバックアップ・システムも当然設置済みで、12月にはテストを行なっていますが、ここでは触れることができません。

また、IBM社のSurfShackがオリンピック村にあり、これはAptiva 14台(OS/2 Warp使用しOS/2 Warp Serverが動くPC Serverに接続、軽井沢のオリンピック村にはAptiva 1台)に選手が簡単にホームページが作れたり、ファンの電子メール(FanM@il)を受送信できたり、Webサーフィンやゲームを楽しめるようになっています。ホームページ作りには、選手はまず部屋の隅でディジタルカメラで写真を撮ってもらい、これをTシャツに焼き込んでもらうと同時にビットマップファイルが作られ、その後アシスタントとAptivaの前に座り「あなたがスポーツ選手になるのに誰が一番影響を与えましたか」、「音楽はどんなものが好きですか」など30問の中から5つくらいを選び答えると、これらの答えと先ほどの写真で簡単なホームページが作れるようになっています。米国タッチスクリーン社がアトランタ・オリンピックでIBM用に作ったものを、日本語部分はディジタル・ガレージが翻訳したと聞いた気がしましたが、ハッキリ知りません。私が2月13日にオリンピック村へいった時には、すでに1200人の選手のホームページができていました。

注3: OS/2 Warp 4は、IBM社が開発・販売しているインテル系のパソコン用オペレーティング・システムです。その安定性、ホストへの接続性、アナログ機器入出力などの機能を生かして、主に企業システムに多く使われていますが、個人用に使っている人も多い。OS/2 Warp日本語版の下では、OS/2、WIN-OS2 (Windows 3.1相当)、DOS/V、WIN-OS2英語版(Windows 3.1英語版相当)、PC DOSのアプリケーションが稼働します。

注4: 次のような新聞記事、雑誌記事、書籍が出ています。

注5: IBMは1960年スコーバレー大会からオリンピックに関係してきましたが、現在はIOCが契約したワールドワイド・パートナー11社(Coca Cola、Visa、Kodak、McDonald'sなど)の1つで、NAOCが契約したものはゴールド・スポンサー(NTT、八十二銀行など)とオフィシャル・サプライヤー(コクヨ、ハナマルキなど)があります。インフォメーション・テクノロジー・スポンサー契約は1994年リレハンメル大会まではその都度行なわれ、リザルトはノルウェーのHego社、InfoとGMは1990年アルベールビルから経験のある米国・会計監査法人のコンサルティング子会社Andersen Consulting、ハードウェアとソフトウェアはIBMが提供などと個々にやっていましたが、1993年に1998年アトランタ大会から2000年シドニー大会までIOCとIBM Corp.との包括的長期契約になり、2002年ソルトレーク大会までオプションでIBM Corp.が行なうことになっています。シドニー大会以降のためには、IBMはスペインを中心に開発(SEMAおよびMSL---Madrid Systema Logistica?---が参加し、タイミング情報はSwiss Timing)を進めています。(パラリンピックでは、1994年リリハンメル大会ではノルウェーのNova社が行ない、1996年アトランタ大会はIBMは行なわず、1998年長野大会では日本IBMが行ないます。)

なお、'98年6〜7月にフランスで行われるワールドカップ・サッカー1998(World Cup Football 1998)は、米国EDS (Electronic Data Systems)社はシステム・インテグレーションを行ない、それぞれHewlett-Packard社が情報システムのハードウェアとソフトウェアを、サイベース(Sybase Inc.)社がデータベースシステムを、フランス・テレコムが通信回線を提供します。インターネットでは英語・フランス語、イントラネット(リザルトシステム、プレス、セキュリティー認証、ホスピタリティービレッジ、組織委員会など)では英語・フランス語・スペイン語が使われます。

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Reviewers's Guide to OS/2 Warp in the Nagano Olympic Information System


Mt. Myoko in Early Spring - Photo: Shuichi Fujita (1995)

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Note: The Reviewer's Guide is a document that a reviewer uses to evaluate the contents of a product. It is a practice often used by Microsoft Corporation, IBM Corporation and others in the computer indutry.

OS/2 Warp in the Nagano Olympic Information System

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Created by Yoshi Mikami, IT Manager, Main Press Center, Nagano Olympic Games, on Jan. 15, 1998. Contact me if you have questions or comments; or at Mobile Phone 020-56-44270. Last update on Apr. 13, 1998.