薔薇十字社の書物

薔薇十字社には、澁澤龍彦らの著作・訳書を中心に数々の好著がある。また、渡辺温、尾崎翠という埋もれた俊才の作品集を上梓したことは大きな収穫として記憶されるところであろう。私の知る限りを記してみたが、未だ未見のものもあり、特装本などはまず市場に出ず、情報も詳らかでない。同好の士の情報を待つ。back

薔薇十字社の元社主様からお便りいただきました。その節はありがとうございました。


◎薔薇十字社未刊書目◎


◎薔薇十字社刊行書一覧◎

コクトオ(澁澤龍彦訳)『ポトマック』

A5判。角背上製クロス装。貼凾入帯付。昭和44年12月25日刊。定価1600円。

☆後に出帆社から「コクトオ選書」の1冊として刊行。何故か凾が些か小さく本が出しづらい。


堂本正樹『男色演劇史』

A5判。角背上製紙装。貼凾入帯付。昭和45年4月1日刊。定価1300円。村上芳正装。帯文澁澤龍彦。口絵写真あり。

☆後に出帆社から増補版が発売された。この出帆社版には凾入とカバー装と2種の異装がある。


種村季弘『吸血鬼幻想』 

A5変形判。角背上製布装。貼凾入。昭和45年7月15日刊。定価2300円。野中ユリ装。

☆帯は重版にのみ、という説もあるが、真相は不明。野中ユリの黄緑色の装釘は目を惹く。(02.5付記)、やはり帯は重版からつけられたが、在庫分の初版本にその帯をつけて出荷したものがごく若干部数あったという情報を寄せていただいた、感謝。


渡辺温『アンドロギュノスの裔』

A5判。角背上製布装。貼凾入帯付。昭和45年9月1日刊。定価1500円。谷崎潤一郎他の追悼文、年譜等収録。装丁挿画渡辺東(温の姪)。

☆帯付完本は、今はそこそこ落ち着いてきたが、それでも3万円くらいするのではなかろうか。


シュペルヴィエル(澁澤龍彦訳)『ひとさらい』

A5判。角背上製クロス装。貼凾入帯付。昭和45年10月20日刊。再版昭和47年3月20日刊。定価1300円。ハンス・アルプ挿画。

☆後に大和書房からも発売された。


加藤郁乎詩集『ニルヴァギナ』

大判。角背上製本。貼凾入。定価2500円。昭和46年8月20日刊。限定999部記番。装幀堀内誠一。


同特装版

著者自筆墨署名・題木凾入。限定記番72部。


澁澤龍彦『黄金時代』  

A5判。角背上製クロス装。貼凾入帯付。昭和46年7月10日刊。定価1800円。意匠澁澤龍彦。構成勝川浩司。後に出帆社からも発売された。


塚本邦雄『悦楽園園丁辞典』

角背上製本布装。貼凾入帯付。昭和46年2月5日刊。定価1800円。装幀横山明。


中田耕治『ド・ブランヴィリエ侯爵夫人』

A5判。角背上製紙装。貼凾入帯付。昭和46年5月1日刊。定価1300円。宇野亜喜良装。本文紺色刷。


今西博子『巴里より愛するママへ』

四六判。並装カバー付(帯?)。二刷昭和46年6月15日発行。定価680円。装幀挿画・渡辺藤一。口絵写真2頁。

元版の今西汎子『巴里より愛する母へ』(實業之日本社、昭和16年)。


尾崎翠作品集『アップルパイの午後』

四六判。角背上製本クロス装。貼凾入帯付。昭和46年11月10日刊。定価900円。谷川晃一装。

(同新装版)

四六判。角背上製本クロス装。カバー帯付。昭和47年6月26日刊。定価800円。

本体装幀はカバー装になり、奥付頁以下桃色紙になり、尾崎翠著者略歴が増補されている。


『定本三島由紀夫書誌』特装本

A5判。丸背上製継表紙クロス装。総革ブックカバー装。小口天は三島瑤子手彩。外凾入帙付。編者墨筆署名入。限定45部。昭和46年11月25日刊。定価36000円。他に著者本5部(天地二方金、小口三島瑤子手彩、非売品)。


(島崎博・三島瑶子編)『定本三島由紀夫書誌』

A5判。丸背上製継表紙クロス装。貼凾入帯ビニカバ付。昭和47年1月25日刊。定価5000円。限定1000部。誤記訂正紙入。


吉田八岑『悪魔考 神に叛くかれた者たち』 

四六判。角背上製紙装。貼凾入帯付。再版昭和47年4月18日刊。野中ユリ装幀。定価1500円。


『大坪砂男全集』全2巻(澁澤龍彦・都筑道夫編・解説)

A5判。丸背上製クロス装。貼凾入帯付。月報付。本文2段組。昭和47年5月26日刊。定価2000円。松本杲夫装。

☆後に出た出帆社版は並製カバー装帯付。


種村季弘『薔薇十字の魔法』

A5判。角背上製紙装。貼凾入帯付。本文茶色刷。昭和47年6月22日刊。定価1600円。堀内誠一装。


トポール『マゾヒストたち』(澁澤龍彦編)

並装。機械凾入帯付。昭和47年8月10日刊。定価680円。堀内誠一装。

☆薔薇十字社唯一の右開き本。


加藤郁乎『かれ発見せり』

A5判。角背上製紙装。貼凾入帯付。昭和47年8月15日刊。定価1800円。堀内誠一装。


『西脇順三郎対談集 詩・言葉・人間』  

四六判。並装。機械凾入帯付。昭和47年8月18日刊。定価900円。装丁中西夏之。


マンスール(巖谷國士訳)『充ち足りた死者たち』

A5判変形。丸背上製布装。硬質ビニルカバ付。栞入。昭和47年8月30日発行。定価1200円。野中ユリ装。栞文澁澤龍彦。

☆スワーンベリの画を印刷した透明カバーをかけて下地の貼付した画を覗かせた瀟洒な本。


窪田般彌『孤独な色事師ジャコモ・カザノヴァ

A5判。角背上製紙装。貼凾入帯付。昭和47年9月30日刊。定価1600円。

☆本体は同じで、『ジャコモ・カザノヴァの生涯と回想』という題でボール紙機械凾入の異装も存在する。


プルースト(窪田般彌訳)『楽しみと日々』

四六判。丸背上製紙装。貼凾入帯付。昭和47年11月10日刊。定価1500円。


ユイスマンス(田辺貞之助訳)『腐爛の華 スヒーダムの聖女リドヴィナ

A5判。角背上製紙装。貼凾入帯付。昭和47年11月20日刊。定価1700円。野中ユリ装。


加藤郁乎『エトセトラ』

A5判。角背上製クロス装。貼凾入。昭和48年1月29日発行。定価1600円。斉藤和雄装。

☆昭和49年には、沖積社から限定50部(内20部がA版、30部がB版)で特装本が発売された。


ジィップ(森茉莉訳)『マドゥモァゼル・ルウルウ』

四六判。並装。貼凾入帯付。昭和48年2月15日刊。定価900円。本文2色刷。序文与謝野晶子。堀内誠一装。


久生十蘭『紀ノ上一族』<Collection Juranesque>

四六判。並装パラ貼込。貼凾入帯付。昭和48年3月8日刊。定価1400円。2段組。解説中井英夫。


ポオ(日夏耿之介訳)『大鴉』

大判。角背上製クロス装。貼凾入帯付。再版昭和48年3月13日刊。定価1200円。旧漢字旧仮名使い。ポオ原文、ドレ挿画入。

☆これがそのまま黒い凾になって出帆社から後に発売された。


久生十蘭『黄金遁走曲』<Collection Juranesque>

四六判。並装パラ貼込。貼凾入帯付。昭和48年5月4日刊。定価1400円。2段組。解説塚本邦雄。


種村季弘編訳『ドラキュラ・ドラキュラ』

四六判。並装。カバー帯付。昭和48年5月21日発行。定価1000円。四谷シモン装。

☆泰西吸血鬼小説のアンソロジー。日夏耿之介、ホフマン、メリメほか。後に河出文庫化。


久生十蘭『巴里の雨』<Collection Juranesque>

解説都筑道夫。未見。この他、コレクシオン・ジュラネスクの4巻目として『夜の鶯』というのが予定されていた。

1999.3付記。一般に、出帆社版になってから、実際に出版され、薔薇十字社版は存在しないと言われているが、我が掲示板に目撃情報を頂いた。

1999.12付記。実際に取り扱ったという某古書店主人の話を直接伺った。が、がしかし、ただの「伝説」くさい。


鷲巣繁男『戯論〈メディアム加藤郁乎〉あるいは詩をめぐっての逍遥游

A5判。丸背上製布装。カバー付段ボール機械凾入。昭和48年6月8日刊。限定1000部記番。定価3800円。


内田愃詩集『航海』

A5判変形。角背上製紙装。貼凾入付。昭和48年8月1日発行。定価1200円。跋文渋沢龍彦。安達東彦画。

☆薔薇十字社最後の出版物。村上博美『幻想書誌学序説』(青弓社)によると、一応発売はされたようだが、殆どゾッキで流れたという。



ディヴィッド・バーガミニ(いいだもも訳)『天皇の陰謀』(全2冊)

並装機械凾入帯付。前篇昭和47年刊。後篇昭和48年刊。れおぽーる書房刊。薔薇十字社発売。


◎薔薇十字社幻の未刊本◎

刊行案内、出版目録に記されながらついぞ刊行されることのなかった幻の書物一覧

バルベー=ドールヴィリ(小島俊明訳)『妻帯司祭』

貼凾入帯付。ビニカバ(?)付丸背上製クロス装。発売寸前に薔薇十字社がつぶれた為、出版されてはいないと思われるが、数十部出回っているという(『幻想書誌学序説』)。その後そのまま出帆社から出版されたが、その際改装したらしく、出帆社版初版本の凾の背部分には「薔薇十字社」と印刷された上に背題が新たに貼付されている。剥がしたことはないので確かなことは言えぬが、よく見ると奥付頁が切り取られ新たに印刷された奥付が貼られているのを確認出来る。2002.5付記。寄せられた情報によると、薔薇十字社版初版は1973年7月9日発行とのこと。因みに出帆社版初版は、1974年10月1日発行。情報を提供していただいた方に御礼申し上げます。

これは出帆社版。


モリオン(澁澤龍彦訳)『イギリス人』

御存知のごとくピエール・モリオンことアンドレ・ピエール・ド・マンディアルグの小説。天声出版の雑誌『血と薔薇』に連載されていたが、突然の三島の死によって澁澤が「訳す気をなくした」為に、予告されておきながら未刊に終わった。その後澁澤訳は白水社より刊行され、米倉斉加年挿画入の桃色染総革特装本まで出ている。


『シュリンガーラ・ティラカ』(松山俊太郎訳)


プラトン他(斉藤忍随他編訳)『恋と美と神秘と』


べールィ(御子柴道夫訳)『交響曲第二番』


大沼忠弘『アルキビアデース列伝』


コクトオ(窪田般彌訳)『ポトマックの最期』


ミルボオ(生田耕作訳)『処刑の部屋』

この訳書は、当初、桃源社の「世界異端の文学」シリーズの1冊として刊行される予定であったようだがシリーズ刊行途中に予告変更され、生田訳は結局未刊である。因にこのミルボオの作品自体は抄訳され『責苦の庭』として牧神社(埋もれた文学の館)から、そして国書刊行会(世紀末フランス文学叢書)から出版されている。


マチュリン(河村錠一郎訳)『放浪人メルモス』

『放浪人メルモス』自体は国書刊行会から訳書が上梓されている。


『泉鏡花全戯曲集』(全3巻:監修三島由紀夫)

監修三島由紀夫、巻末泉鏡花書誌制作島崎博という企画だったという(島崎博「『三島由紀夫書誌』回想」)。


久生十蘭『夜の鶯』<Collection Juranesque>

吉田健一解説。「コレクシオン・ジュラネスク」シリーズ最終巻で昭和48年9月に出る予定だった。


アンドレーエ(高橋巖訳)『錬金術奥義書 化学の結婚』

この訳書は、ちょっと前に種村季弘訳により、紀伊国屋書店より単行本として上梓された。


パニッツァ(村田經和訳)『愛欲公会議』

種村季弘訳『パニッツァ全集』筑摩書房刊を参照。


ヴェルレーヌ(窪田般彌訳)『女友達』

後に森開社より出版された。


写真集『男の死』被写体/三島由紀夫

被写体三島由紀夫。撮影篠山紀信。装本横尾忠則。跋文澁澤龍彦。写真40点、撮影日録付100頁。上製本。

☆顔ぶれからして正に超豪華本。発売予定日は昭和47年11月25日だった。しかし何らか(…)の理由で発売はされなかった。ジョン・ネイスン『三島由紀夫―ある評伝』(新潮社)によると、斧で頭を割られた三島、ダンプに轢かれた三島、三島の切腹と篠山の介錯人等の写真が入る予定だったという。

三島の死後、出版の企画だけは他の出版社で少しあったという。(管理人が某編集者から直接聞いた話)。

『男の死』発売広告


薔薇十字社及薔薇十字社本に関する情報をお寄せ下さい。MAIL      index